調節性分泌経路への輸送選別を担うシグナルを同定するという目標に対して,HaloTagとの融合により調節性分泌への輸送が促進される分泌タンパク質としてシスタチンを同定した。アミラーゼのシグナルペプチド配列のみを付加したssHaloと比較すると,HaloTag融合したシスタチンの方がアミラーゼと共局在する率が高いこと,分泌顆粒内のHaloTag融合シスタチンとアミラーゼのシグナル強度には正の相関があることが示された。これまでにアミラーゼは分泌顆粒内で複合体を形成していることを報告している。HaloTag融合シスタチンはアミラーゼと相互作用することによって,高分子複合体に参加しているために,調節性分泌経路へ効率よく輸送されている可能性があると考えた。しかし,ブルーネイティブPAGEを用いて,細胞抽出液中の非変性状態の複合体を解析したところ,アミラーゼ複合体にHaloTag融合タンパク質は含まれていなかった。また,光反応性クロスリンカーを用いて細胞内におけるタンパク質同士のクロスリンクを試みたが,アミラーゼとHaloTag融合タンパク質の架橋産物は検出されなかった。このことは,大部分の分泌顆粒内ではアミラーゼとHaloTag融合タンパク質との複合体は形成されていないことを示唆している。耳下腺の分泌顆粒は,ゴルジ装置で形成されるときには内部pHが酸性に傾いているが,成熟するにつれて中性に近づくと報告されている。したがって,ゴルジ装置における分泌顆粒形成時にはpHの影響で複合体を形成している可能性がある。
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