平成27年度は、口腔感覚と咀嚼を制御する中枢神経機構を解明するため、ラットをウレタン・クロラロースで麻酔し、下歯槽神経の電気刺激により開口反射を誘発させた。下歯槽神経の電気刺激強度は、開口反射を誘発させる閾値の1.2倍に設定した。開口反射を誘発させながら、口腔感覚と咀嚼の制御に関係していると考えられる赤核の電気刺激を行った。そして、赤核と神経線維連絡がある前庭神経核の電気破壊もしくはムシモル注入を行い、開口反射にどのような変調が見られるか検索し、以下のことが明らかとなった。1.赤核刺激により開口反射は促通された。2.前庭神経外側核、前庭神経内側核または前庭神経上核の電気的破壊やムシモル注入は、赤核刺激による開口反射の促通を減少させた。3.前庭神経下核の電気的破壊やムシモル注入は、赤核刺激による開口反射の促通を増加させた。これらのことから、前庭神経核は赤核刺激による開口反射の促通に関与していることが示された。 研究期間全体を通じて、次のことが示された。1.外側網様核は、赤核刺激による開口反射の減弱に関与している。2.赤核は、大縫線核刺激による開口反射の減弱に関与している。3.前庭神経核は赤核刺激による開口反射の促通に関与している。4.赤核は嚥下の制御に関与している。
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