研究課題/領域番号 |
25462904
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
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研究分担者 |
小林 泰浩 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20264252)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 極性化 / Wnt非古典経路 |
研究実績の概要 |
Wnt5a-Ror2シグナルによる破骨細胞の極性化制御機構について、平成25年度には、Wnt5a-Ror2シグナルがアダプター分子であるDaam2を介してRhoを活性化することおよびRhoの下流で働く分子であるプロテインキナーゼN3(PKN3)を見出した。平成26年度は、PKN3の破骨細胞における役割を明らかにするために以下の実験を行った。①PKN3遺伝子欠損マウス(PKN3 KO)の骨について、マイクロCTおよび骨形態計測を用いて解析した。PKN3 KOの骨量は野生型マウス(WT)と比べて有意に増加していた。破骨細胞数および骨芽細胞数は差が無かった。吸収窩の深さはPKN3 KOで有意に浅く、また、骨吸収マーカーである血清CTXはPKN3 KOで有意に低値であった。骨形成速度には差が無かった。②PKN3 KOの破骨細胞および骨芽細胞について、in vitroでの解析を行った。PKN3 KOの破骨細胞は骨吸収活性が有意に低下していた。また、アクチンリングを形成している細胞数も減少していた。骨芽細胞を石灰化誘導培地で培養したが、ALP活性および石灰化に差は認められなかった。①、②より、PKN3 KOマウスは骨吸収活性の低下により骨量が増加することが示された。さらに、③PKN3がアクチンリング形成に関与するメカニズムを明らかにするため、破骨細胞におけるPKN3の局在を調べた。免疫染色を行おうとしたが、入手可能な抗体ではうまくいかなかった。そこで、緑色蛍光タンパク質Venusを融合したPKN3および赤色蛍光タンパク質DsRedを融合したアクチンを発現するアデノウイルスベクターを作成した。PKN3とアクチンは共局在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rhoの下流で働く分子として見出したPKN3について、in vivoにおいても重要であることを示す結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
PKN3がアクチンと共局在することが明らかになったので、PKN3がどのようなタンパク質と相互作用しながらアクチン骨格を制御するかを調べる。具体的には、Venus-PKN3を発現した破骨細胞の細胞抽出液に抗Venus抗体を作用させて免疫沈降を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度、蛍光タンパク質を融合したPKN3およびアクチンを発現するアデノウイルスベクターの作成が予定より順調に進行したため。 当初の計画では、作成までにもう少し試行錯誤が必要であると考え、アデノウイルスベクターの作成キット(20.1万円)、作成したベクターをトランスフェクション可能な状態にするための制限酵素(3万円)、増幅したウイルスを精製するキット(10.3万円)、精製したウイルスの量を測定するキット(4.3万円)(4点で計37.7万円)について2つずつ購入することを計画していた。しかし、1つずつ購入して始めた実験で作成に成功したので、2つ目を購入する費用が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
アデノウイルスベクターを作成するキットを一揃い購入可能な金額であるので、当初の予定よりも多くのアデノウイルスを作成可能である。 平成26年度はVenusを融合した全長のPKN3を発現するアデノウイルスを作成した。平成27年度はVenusを融合したPKN3のドメイン欠失変異体(2種類)を発現するアデノウイルスベクターを作成し、それぞれの変異体をPKN3 KO破骨細胞に発現してアクチンリング形成および骨吸収活性が回復するかを明らかにする。
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