研究課題/領域番号 |
25462905
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (20350829)
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研究分担者 |
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Wnt / Ryk / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
Wnt シグナルは発生、成体における恒常性の維持、老化など多様な生命現象に関与し、その破綻は様々な病態をもたらす。Wnt受容体として7回膜貫通型Frizzledが10種類、1回膜貫通型LRP5, LRP6, Ror1, Ror2およびRykが存在する。1回膜貫通型受容体には、Frizzledの共役受容体として機能するものと、単独で機能するものがある。このようにWntは、受容体の組合せを使い分けて複雑な生物学的プロセスを精緻に制御する。Rykはその一翼を担う。Wntシグナル伝達様式は古典経路と非古典経路の2種類に分類される。古典経路は骨形成を促進し,非古典経路のWnt5a-Ror2シグナルは、研究協力者の小林らにより、破骨細胞分化を促進することが見出された(Nat Med 18:405, 2012)。一方、Rykシグナルは古典経路と非古典経路の双方に関与し,Rykは異端 (heretical) Wnt受容体と呼ばれる。Ryk欠損(Ryk KO)マウスは出生日に死亡するため、Ryk KOマウスを用いた骨代謝機能の解析は不可能であり、申請者が作製したRyk cKOマウスを用いてのみ可能である。本研究は、骨代謝におけるRykの生理作用と分子メカニズムの解明を、国内外において唯一Ryk cKOを用いて行うものである。前年度は,計画通り破骨細胞系列特異的RykcKOの作製と解析を完了した.全身的なRyk KOマウスは,破骨細胞数および骨芽細胞数の減少が認めらたが,破骨細胞系列特異的RykcKOにおいては,特に骨代謝異常は認められなかった.本年度(平成26年度)は,計画通り骨芽細胞系列特異的Ryk cKOマウスの作製および解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記した本年度に実施計画の実験はすべて実施し,骨芽細胞系列におけるRykの役割を明確に示すことが出来たため.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画通り,以下の実験を実施予定である (1)リガンド依存的な(i)Rykのリン酸化、および(ii)Ryk相互作用因子の解析(i)Hisタグ付きRykを骨芽細胞または骨髄細胞に過剰発現させ、Wnt3aまたはWnt5aで刺激する。Cell lysateを用い抗His抗体にてRykタンパクを免疫沈降後、抗リン酸化Ser抗体、抗リン酸化Thr抗体もしくは抗リン酸化Tyr抗体を用いウエスタンブロットを行い、Rykがリン酸化されるか検討する。Rykのリン酸化が認められた場合、様々なRykの欠失変異体を作製し、Rykのリン酸化部位を同定する。(ii)(i)で同定したリン酸化部位の前後のアミノ酸配列についてdata base上でモチーフ検索を行う。その結果を基に、Rykの相互作用因子の候補を絞る。これらの候補因子の抗体を購入し、免疫沈降法により実際に候補因子がRykと相互作用するか、検討する。 (2)リン酸化アレイ解析によるRyk下流のシグナルカスケードの同定 骨芽細胞系列特異的Ryk cKOマウスおよび野生型マウスの骨組織からタンパク質を抽出しそれぞれCy3またはCy5で蛍光標識する。これを抗体アレイ(Antibody array 500, クロンテック社)に供する。その結果より、Ryk cKOマウスにおいて傷害されているリン酸化カスケードを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子型判定用のDNA合成酵素や抗体が,定価より安い金額で購入できたためである
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の研究実施により,ピンセットやハサミの先が破損したため,これらの解剖道具の購入費用に当てる.
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