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2014 年度 実施状況報告書

破骨細胞Ca2+活性化K+チャネルの骨吸収シグナル制御分子としての機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 25462907
研究機関福岡歯科大学

研究代表者

岡本 富士雄  福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60153938)

研究分担者 鍛治屋 浩  福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (80177378)
岡部 幸司  福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (80224046)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード破骨細胞 / カルシウム活性化カリウムチャネル / TRPチャネル / 骨吸収
研究実績の概要

本年度は、マウス骨髄細胞から誘導した成熟破骨細胞に発現するCa2+活性化K+チャネル(KCa チャネル)の発現と非選択性陽イオンチャネル(TRPチャネル)の発現を免疫染色およびウエスタンブロット解析により検討した。
マウス成熟破骨細胞におけるKCa チャネルの発現については、高コンダクタンス型のKCa1.1と中コンダクタンス型のKCa3.1を免疫染色により調べた。その結果、KCa1.1はほとんど検出されなかったが、KCa3.1は発現している細胞と発現していない細胞とが認められた。TRPチャネルについては、免疫染色にてTRPM7の発現を認めた。しかし、これらの結果はウエスタンブロット解析の結果と一致しなかった。特に、TRPM7はウエスタンブロット解析ではほとんど検出されなかった。この矛盾については、再検討する余地がある。また、KCa3.1は多核の成熟破骨細胞よりも分化過程にある細胞の方が高発現を示した。
そこで、破骨細胞形成におよぼすKCa チャネル阻害剤および電位依存性K+チャネル(Kvチャネル)阻害剤、TRPチャネル阻害剤の効果についても検討した。アクチンリングを有するTRAP陽性多核細胞の数を指標に破骨細胞形成を評価した。KCa1.1の阻害剤(iberiotoxin)は、破骨細胞形成にほとんど影響しなかった。一方、KCa1.1 、KCa1.2 、Kv1.3の阻害剤(charybdotoxin)は破骨細胞形成を抑制した。Kv1.3の阻害剤でKCa チャネルには影響しない阻害剤(margatoxin)は、破骨細胞形成に対して弱い抑制を示した。また、TRPチャネル阻害剤(ruthenium red)は破骨細胞形成を強く抑制した。
以上の結果より、成熟破骨細胞による骨吸収には、新たな分子としてKCa3.1とTRPM7が関与していると考えられた。また、破骨細胞の形成にはKCa3.1とKvチャネルの関与が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は成熟破骨細胞にはCa2+活性化K+チャネル(KCa チャネル)、電位依存性K+チャネル(Kvチャネル)および非選択性陽イオンチャネル(TRPチャネル)が存在することを機能的に証明した。このことはKCaチャネルの活性化が膜を過分極させ、TRPチャネルからのCa2+流入を促進する状況証拠として重要な知見であり、細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出がさらなる細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)上昇を引き起こす(正帰還[Ca2+]i制御)機構の存在を強く示唆する。また、KCaチャネルが骨吸収に関与している可能性についても明らかにしてきた。本年度はさらに、成熟破骨細胞に発現するKCaチャネルとTRPチャネルの分子種を調べ、KCaチャネルではKCa3.1、TRPチャネルではTRPM7の存在を明らかにした。さらに、破骨細胞形成においてもKCa3.1やKvチャネル群およびTRPチャネル群が関与している可能性を掴んだ。以上の成果は本研究計画の約60%を達成するものであり、本研究課題はおおむね順調に進行していると考える。

今後の研究の推進方策

昨年度、成熟破骨細胞にはCa2+活性化K+チャネル(KCaチャネル)とTRPチャネルが存在することを機能的に証明し、これらのチャネルの骨吸収への関与を明らかにした。本年度は、これらのチャネルの分子種について免疫染色法およびウエスタンブロット解析法を用いて検討し、KCa3.1をはじめいくつかの候補分子を突きとめた。
今後はこれらの結果をふまえて、同定したチャネルの選択的阻害剤による機能抑制およびshRNAによる発現抑制を試み、細胞内Ca2+濃度に及ぼす効果と骨吸収活性に及ぼす効果を調べる。結果より、KCaチャネルの活性化、過分極誘発、Ca2+流入、これらの3事象の関連性を検証し、細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出がさらなる[Ca2+]i上昇を引き起こす(正帰還[Ca2+]i制御)機構の存在をさらに明確にするとともに、正帰還[Ca2+]i制御機構を構成するKCaチャネルとTRPチャネルの分子種をさらに明確にする。
また、正帰還[Ca2+]i制御機構を動員する骨吸収調節因子の検索を行なう。種々の骨吸収調節因子の中で、正帰還[Ca2+]i 制御機構を動員する因子を、KCa チャネルとTRPチャネル活性および[Ca2+]iの変化を指標に検索する。特に、破骨細胞に直接作用するホルモンやサイトカインおよび薬剤(カルシトニン、RANKL、ビスフォスフォネートなど)の作用について検討する。

次年度使用額が生じた理由

本年度は研究成果発表のための外国旅費として250,000円を計上していたが、次年度の実験消耗品(特に細胞培養関係試薬および抗体類)の購入費用を充実させる必要があると考え、計画していた米国骨代謝学会への参加を見送った。そのため、次年度使用額245,798円が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成27年度請求額(直接経費の額1,000,000円)と次年度使用額245,798円を合算した本年度使用見込額は1,245,798円となる。使用計画は次の通りである。消耗品費として実験動物および細胞培養関係器具に300,000円、PCR関連試薬およびウエスタンブロット解析および免疫染色に使用する器具類の購入に150,000円、shRNA合成関連試薬類の購入に150,000円、国内旅費に100,000円、学会参加費および論文投稿料および掲載費に300,000円を使用する予定である。残額245,798円は、細胞培養に必要な血清、サイトカイン類(M-CSFとRANKL)、およびウエスタンブロット解析、免疫染色に必要となる抗体の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] TRPM7は象牙芽細胞に高発現する2015

    • 著者名/発表者名
      圓谷智之、福島秀文、片桐千秋、岡本富士雄、岡部幸司、松下正之
    • 学会等名
      第120回日本解剖学会総会・全国学術集会、第92日本生理学会大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2015-03-21 – 2015-03-23
  • [学会発表] Expression analysis of TRPM7 in the odontoblasts2014

    • 著者名/発表者名
      Tomoyuki Tsumuraya, Chiaki Katagiri, Fujio Okamoto, Koji Okabe, Masayuki Matsushita
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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