研究課題/領域番号 |
25462912
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
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研究分担者 |
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802) [辞退]
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
松田 彩 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 研究員 (60514312)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗癌剤 / PTP4A1 / シスプラチン |
研究実績の概要 |
我々は、これまでにシングルセルクローニング法を用いた独自の方法でシスプラチン耐性遺伝子を同定してきた。このうちの一つであるPTP4A1は、強制発現させるとシスプラチンに抵抗性を示すこと、逆にsiRNAでその発現を減弱させるとシスプラチンに対して感受性が高まることを我々は明らかにしてきた。また、PTP4A1が細胞の増殖能を上昇されることから、PTP4A1がシスプラチン耐性能だけでなく、多角的に癌の悪性化に関与していることも示された。しかし、PTP4A1のシスプラチン耐性の機序についてはこれまで不明であった。 我々は、RNA結合タンパクであるHuRに注目した。HuRは3'UTR領域にAU rich element(ARE)という特別な配列を持つmRNA(ARE-mRNA)に特異的に結合するタンパクで、HuRと結合したmRNAは安定化しその後翻訳される。PTP4A1はARE-mRNAであることから、シスプラチンによるHuRの細胞内での移動について研究を行いPTP4A1の抗シスプラチン効果の機序について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HuRは核内でmRNAに結合した後に細胞質内へ移動し、翻訳の場であるリボソームにmRNAを運ぶ。我々はHuRの細胞内の局在移行にシスプラチンがどのように関与するか調べた。我々の期待どおり、口腔癌細胞株SAS細胞をシスプラチン処理すると、HuRは核から細胞質へその局在を変化させることがわかった。その結果、ARE-mRNAの一つであるPTP4A1 mRNAは安定化して翻訳され、シスプラチン耐性に関与する可能性が考えられた。我々はPTP4A1を内因性シスプラチン耐性遺伝子と考えてきたが、シスプラチンに反応性に発現量が上昇する獲得性シスプラチン耐性遺伝子でもある可能性が示唆された。 また、論文"Identification of marker genes required to predict oral cancer cells with intrinsic resistance to cisplatin"がOncology Lettersにacceptされた(現在in press)ことも概ね順調である理由としている。
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今後の研究の推進方策 |
PTP4A1がシスプラチン耐性に関与すること、およびその機序の一端が明らかとなってきたが、我々が以前行った実験では、PTP4A1のmRNA量とシスプラチン耐性に関連性がみられたものの、病理組織学的研究によるPTP4A1の免疫染色の結果は芳しいものではなかった。その理由の一つに抗体の染色性が十分でなかったことが挙げられる。in vitroでは良好な結果が得られていることから、新たな抗体を用いて免疫染色を行う予定である。実際に患者からの生検組織を採取した際に免疫染色でPTP4A1の発現を免疫染色で観察できれば、シスプラチンに対する抵抗性を予測出来る可能性がある。 また口腔癌に普遍的な内因性シスプラチン耐性遺伝子を検索するため、複数の細胞株に共通する遺伝子を検索するために細胞株を樹立した。これらの遺伝子解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
我々は以前からARE-mRNAの研究を行ってきており、物的資源が比較的充実していたことが一番の理由である。また、論文のリバイスのために財源を確保する必要が生じたことと、タンパクアレイのための予約が年度内に取れなかったことも理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
数種の口腔癌細胞株からシングルセルクローニングによって樹立した数十個の細胞株はそれぞれシスプラチン感受性が異なり、耐性株と感受性株を樹立することができた。これらのタンパクアレイを近々行う予定である。これらを解析することによって厳選された普遍的な口腔癌シスプラチン耐性遺伝子の同定を行う予定である。
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