今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、当初の予想と異なり、ビオチン充足(BS)およびビオチン欠乏(BD)マウスでアトピー性皮膚炎様症状に有意な差が認められなかった。そこで、以下の様に研究計画を修正して、さらに研究を推進する。 本研究で用いたBDマウスは比較的軽度のビオチン欠乏であり、ヒトのビオチン欠乏症で認められる脱毛や皮膚炎症状などを示さないことを報告している(Kuroishi, T., et al. J. Leukoc.Biol. 2008; 83: 912-920.)。一方、飼料のタンパク源に乾燥卵白(ビオチンに対して高親和性のアビジンを多く含み、ビオチンの吸収を阻害する)を用いることにより、重度のビオチン欠乏状態を誘導できることが報告されている(Watanabe, T., et al. Nutrition 2009; 25: 78-84.)。そこで、この乾燥卵白飼料を用いて重度のビオチン欠乏状態を作製し、アトピー性皮膚炎発症への影響を検討する。 本研究で認められたNC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎様症状は、その発症率および程度ともに、これまでの報告よりも軽度であった。NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎自然発症は環境の清浄度に依存することから、本研究での飼育環境が自然発症の実験系に最適ではなかった可能性が考えられる。一方、本マウスは化学物質(ハプテン)連続塗布によりアトピー性皮膚炎様症状を発症することも報告されている(Shiohara, T., et al. J. Dermatol. Sci. 2004; 36: 1-9.)。そこで、ハプテン誘導性皮膚炎に対するビオチン摂取量の影響を解析する。
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