研究課題/領域番号 |
25462915
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研究機関 | 東都医療大学 |
研究代表者 |
勝部 憲一 東都医療大学, ヒューマンケア学部, 教授 (20233760)
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研究分担者 |
栢森 高 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10569841)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Notch3 / CAF / 癌幹細胞 / 脈管新生 / 扁平上皮癌 |
研究概要 |
癌浸潤の過程で、周囲の間葉組織や炎症細胞の誘導は重要な因子である。以前はこれらの因子は癌浸潤を抑制するものだけと考えられていたが、最近CAF(cancer associated fibroblasts)に代表されるように積極的に浸潤を助長する細胞群があることもわかってきた。また癌浸潤と脈管新生は密接な関連があり、脈管の発生・分化に関係する因子は重要である。我々は以前からその中のひとつとしてNotchシグナルに注目している。Notchはリガンド・受容体とも膜タンパクで、隣接する細胞同士でしかシグナル伝達が起こらないあ特異なシグナルだが、組織・器官の増殖・分化のさまざまな場面で機能している。 我々は幾つかのヒト口腔扁平上皮癌の培養株を用いて、マウス間葉系幹細胞(ST-2)に対してNotchシグナル系の誘導の有無を調べた。その結果Notch3の発現が特異的に上昇することを見いだし、さらにそれが間葉細胞(マウス)由来であることを解明した(mRNAレベルとタンパクレベルの両方)。Notch3はヒトでは脈管形成に重要な役割を担うことが知られており、例えば先天性脳卒中症候群CADASIL(Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarct and Leukoencephalopathy)の原因遺伝子である。またリンパ管形成についても重要な役割が知られているので、この遺伝子に注目して解析をおこなっている。またBoyden chamberを用いた実験からがん細胞によるST-2のNotch3誘導には直接の接触が不可欠であることがわかった。現在がん細胞と間葉細胞の仲介因子の解析を進めていて、Wntシグナルなど発生でNotchと関連するシグナルを探索している。合わせてCADASIL型の遺伝子変異を持つNotch3を導入して、その影響も検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Notch3は幾つかのヒト脈管疾患の原因遺伝子あるいは関連遺伝子として知られているが、その機能解明はほとんど進んでいない。マウスモデルではヒト疾患を再現できないからである。そのためあまり注目されてこなかったが、本研究で癌が招く脈管新生との関連が示唆されている。このため本研究を推進することでまったく新たなNotch3遺伝子機能を提示できる可能性がある。 またNotch3誘導に関しては網羅的な遺伝子探索を、がん細胞・間葉細胞の両方でおこなっており、その探索は初年度研究目標に合う可能性がある候補を提示できるだろうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞と間葉細胞の間でnotch3誘導に関連する因子候補の同定を進め、同時に口腔扁平上皮癌の臨床症例で脈管浸潤度とNotch3誘導に関連があるかどうかを調べる。 Notch3シグナル下流にある因子群の解析を進め、間葉細胞からリンパ管内皮細胞誘導をおこなう因子(VEGFR3, HIFなど)との関連があるかどうかをST-2を用いて調べる。これらの因子はヒト間葉細胞初代培養でも誘導がかかるかどうかを調べる。 CADASIL型変異Notch3遺伝子を導入したので、野生型Notch3とこの変異Notch3の導入ST-2細胞で発現の差異があるものを、網羅的に解析をおこなう。この結果見つかる遺伝子については臨床症例で発現の差異があるかどうを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
利息が生じたため 次年度の充当とする
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