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2014 年度 実施状況報告書

上皮性癌における細胞内プロテアーゼの新しい機能の解析

研究課題

研究課題/領域番号 25462920
研究機関長崎大学

研究代表者

福間 裕  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 技術職員 (50253688)

研究分担者 筑波 隆幸  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (30264055)
岡元 邦彰  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (10311846)
西下 一久  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (20237697)
坂井 詠子  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10176612)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード細胞内プロテアーゼ / 上皮性癌
研究実績の概要

これまで癌におけるプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の機能は、増殖・浸潤・転移に関与する「悪玉因子」として作用すると考えられてきた。しかしながら、我々はエンドソーム・リソソーム性プロテアーゼであるカテプシンEが抗腫瘍効果を示す「善玉因子」として機能することを見出した。本プロテアーゼは、in vitro の実験系で、癌細胞のみを濃度依存的にアポトーシスに誘導し、免疫系細胞の活性化などを通じて、腫瘍の増殖・転移を抑制しているようである。最近我々は、in vivoでも、カテプシンE欠損マウスが上皮性癌を発症することを見出している。本研究では、抗腫瘍効果を示すプロテアーゼのさらなる分子メカニズム、特に上皮細胞における発癌に関する分子機構の解明と予防・診断・治療への応用を目指す研究を遂行する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は以下のような3つの項目の実験を行った。
1)カテプシンE欠損マウスにおける酸化ストレスの上昇機構の解明:   カテプシンE欠損マウスの血清を検査すると、H2O2の値が異常に高いことに気が付いた。そこで、生体に多量に含まれる還元タンパク質であるグルタチオンに関して存在レベルを測定すると、これらの結果から、カテプシンEの欠損マウスでは酸化ストレスが上昇していることが明らかになった。
2)酸化タンパク質の蓄積の免疫組織学的解析による同定:    細胞や組織で発生する活性酸素種(ROS)は近くに存在するタンパク質を非特異的に酸化することが知られている。タンパク質がROSにより酸化修飾を受け、カルボニル誘導体となったタンパク質を特異的に検出することができる2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いて、カルボニル 基を誘導体化し、DNPH特異的抗体で免疫組織化学的解析を行う。このことにより、カテプシンE欠損マウスでの酸化タンパク質の蓄積を組織レベルで解析を行った。
3)組織、細胞での酸化タンパク質のプロテオーム解析:    カテプシンEはプロテアーゼであることから、特殊な酸化タンパク質分解に関与している可能性も充分考えられた。そこで野生型マウスとカテプシンE欠損マウスの癌の特徴を生化学的に解析する目的で、癌病変部のプロテオーム解析を行った。カテプシンE欠損マウスの癌病変部位および野生型マウスの正常同一部位を切除し、切除組織からタンパク質を抽出後、2次元電気泳動で展開し、変化の大きいタンパク質スポットを同定している途中である。今後は定法通り、質量分析法にてタンパク質のアミノ酸残基からタンパク質を同定する予定である。

今後の研究の推進方策

今後は以下のような研究を行う予定である。
1)カテプシンE酵素による癌治療への試み
カテプシンEが癌細胞の増殖を抑制するかを調べるために、ヒトの前立腺癌であるALVA101に空ベクターとヒト・カテプシンEを含むベクターを発現させた細胞群の同数をヌードマウスへ移植29日後肉眼的観察した。結果は、明らかに増殖が小さくなっていた。病理組織学的解析により、カテプシンE発現細胞はよく発達した被膜構造物によって仕切られていた。ここでは以下に述べる治療効果の検討を行う。
2)カテプシンE酵素製剤の直接注射による癌細胞増殖抑制効果の検討
ヒト由来前立腺がん細胞(ALVA-41,ALVA-10)をヌードマウス右脇腹皮下に移植し、腫瘍がある一定の大きさに達したのちに、生理食塩水と精製カテプシンE酵素を10~20日投与し、腫瘍の大きさを測定した。予備実験ながら、カテプシンE投与により、癌は退縮した。雄ヌードマウス5匹に対して、生理食塩水あるいは精製カテプシンEを200μg/kg/dayを16日続けると、腫瘍の大きさが半分にまで退縮するという結果を得ている。今後、組み換え型ヒト・カテプシンEを大量精製し、投与方法などを検討してさらに効率の良い抗癌作用をもたらす方法を開発する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Inhibitory effects of tert-butylhydroquinone on osteoclast differentiation via up-regulation of heme oxygenase-1 and down-regulation of HMGB1 release and NFATc1.2014

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Y, Sakai E, Sakamoto H, Fumimoto R, Fukuma Y, Nishishita K, Okamoto K, Tsukuba T
    • 雑誌名

      J Appl Toxicol

      巻: 34 ページ: 49-56

    • DOI

      10.1002/jat.2827.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Defective adipose tissue development associated with hepatomegaly in cathepsin E-deficient mice fed a high-fat diet.2014

    • 著者名/発表者名
      Kadowaki T, Kido MA, Hatakeyama J, Okamoto K, Tsukuba T, Yamamoto K
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun

      巻: 446 ページ: 212-217

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2014.02.089.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Repression of cathepsin E expression increases the risk of mammary carcinogenesis and links to poor prognosis in breast cancer.2014

    • 著者名/発表者名
      Kawakubo T, Yasukochi A, Toyama T, Takahashi S, Okamoto K, Tsukuba T, Nakamura S, Ozaki Y, Nishigaki K, Yamashita H, Yamamoto K.
    • 雑誌名

      Carcinogenesis

      巻: 35 ページ: 714-726

    • DOI

      10.1093/carcin/bgt373.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Rab27Aは破骨細胞の多核化とリソソーム機能を制御する2014

    • 著者名/発表者名
      菅原めぐみ,坂井詠子,福間裕,西下一久,岡元邦彰,福田光則,泉哲郎,吉田教明,筑波隆幸
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会合同大会
    • 発表場所
      京都府・京都市・京都国際会議場
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] Nrf2遺伝子欠損マウスにおける酸化ストレスと骨代謝2014

    • 著者名/発表者名
      坂井詠子,山口優,福間裕,菅原めぐみ,西下一久,岡元邦彰,筑波隆幸
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会合同大会
    • 発表場所
      京都府・京都市・京都国際会議場
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] 破骨細胞における膜動態と細胞骨格制御に関与するタンパク質の解析2014

    • 著者名/発表者名
      岩竹真弓,岡元邦彰,筑波隆幸
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会合同大会
    • 発表場所
      京都府・京都市・京都国際会議場
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] コバルトプロトポルフィリンの破骨細胞分化および活性化に対する影響2014

    • 著者名/発表者名
      八島由佳,岡元邦彰,坂井詠子,西下一久,筑波隆幸
    • 学会等名
      第56回歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      福岡県・福岡市・福岡国際会議場
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] Nrf2 遺伝子欠損マウスにおける酸化ストレスと破骨細胞分化2014

    • 著者名/発表者名
      坂井詠子,福間裕,菅原めぐみ,西下一久,岡元邦彰,筑波隆幸
    • 学会等名
      第56回歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      福岡県・福岡市・福岡国際会議場
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] 破骨細胞の分化抑制に関するエラジタンニン類の作用メカニズムの解明2014

    • 著者名/発表者名
      岩竹真弓,坂井詠子,西下一久,岡元邦彰,筑波隆幸
    • 学会等名
      第56回歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      福岡県・福岡市・福岡国際会議場
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] 破骨細胞におけるポドソームの形成に関与するタンパク質の同定とその機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      岩竹真弓,岡元邦彰,筑波隆幸
    • 学会等名
      第56回歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      福岡県・福岡市・福岡国際会議場
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] 破骨細胞の多核化とリソソーム機能を制御するrabタンパク質の同定2014

    • 著者名/発表者名
      菅原めぐみ,坂井詠子,福間裕,西下一久,岡元邦彰,吉田教明,筑波隆幸
    • 学会等名
      第56回歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      福岡県・福岡市・福岡国際会議場
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] 破骨細胞における細胞骨格を制御するタンパク質の同定と機能の解明2014

    • 著者名/発表者名
      岩竹真弓,岡元邦彰,筑波隆幸
    • 学会等名
      第19回日本病態プロテアーゼ学会
    • 発表場所
      大阪府・豊中市・千里ライフサイエンスセンター
    • 年月日
      2014-08-08 – 2014-08-09
  • [学会発表] 歯周病細菌によるヒト肝細胞株への細胞侵入と脂肪滴形成への影響2014

    • 著者名/発表者名
      財津有末,岩竹真弓,坂井詠子,岡元邦彰,佐藤啓子,中山浩次,筑波隆幸
    • 学会等名
      第19回日本病態プロテアーゼ学会
    • 発表場所
      大阪府・豊中市・千里ライフサイエンスセンター
    • 年月日
      2014-08-08 – 2014-08-09

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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