研究実績の概要 |
放射線治療は頭頸部癌に広く用いられるが口腔乾燥症と口腔粘膜障害が高頻度に発生するため患者QOLを低下させる。アミフォスチンなどのL体含硫アミノ酸は防護薬として古くから開発されてきたが、有害作用が強いため臨床ではほとんど使用されない。申請者はこれまでにD体メチオニンが頭頸部放射線照射による口腔粘膜障害および唾液腺機能障害に防護効果を持ち有害作用がほとんど無いことを明らかにした。D体アミノ酸はL体アミノ酸とは異なる代謝過程を持つことが知られている。本研究計画ではDアミノ酸代謝関連遺伝子変異動物を用いてD体メチオニンの放射線防護効果の作用機序を明らかにすることを目的として申請した。申請者は、アミノ酸と唾液分泌との関連性の解析結果として、1) ラット耳下腺、顎下腺、舌下腺においてD-セリン、D-アスパラギン酸、D-アラニンが存在すること、2)ピロカルピン刺激唾液分泌量がDAO欠損マウスは野生型マウスに比べ約2.5倍以上多いこと、3)野生型マウスにおいてD-セリン経口投与により唾液分泌量が有意に増加すること、4)D-セリンをL-グルタミン酸とともにラット顎下腺へ灌流すると用量依存的に唾液分泌量が立体構造特異的に増加すること、5)唾液腺細胞にはNMDA受容体、DAOおよびD-セリン合成酵素(Serine racemase)が発現していること、などを昨年度の再現性について確認するとともに、D-メチオニンは9.247865e+09(L/moles/sec), L-メチオニンは1.381642e+10, D-システインは1.604136e+10、L-システインは1.823768e+10 ヒドロキシラジカルを消去することを明らかにした。即ち、D-メチオニンはL-メチオニンと同程度に弱いスカベンジャー作用を有することを明らかにした。
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