研究課題/領域番号 |
25462934
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 直行 日本大学, 歯学部, 助教 (20386080)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 新規遺伝子増幅法 / 診断マーカー |
研究概要 |
細胞診検体から核酸(DNAおよびRNA)を抽出し、遺伝子増幅に用いるまでそれぞれを保存した。蛍光によるloop mediated isothermal amplification(LAMP)法の検出システムをチェックするために、がん遺伝子Xの既知の突然変異ホットスポットに対してプライマーを試作し、最終的に基本プライマー4種に加えループプライマー1種を設計した。培養細胞(前述の遺伝子Xに既知の遺伝子変異を持つ)から得られたDNAを元にIsothermal Master Mix(ニッポンジーン社)を用いてLAMP反応溶液を調整し、Genie II(等温増幅蛍光測定装置、OptiGene社)によりLAMP増幅反応の検出を行ったところ、約20分で遺伝子変異の検出が可能であった。従来より用いている等温増幅濁度測定装置では検出までに約40分を要しており、本システムによる遺伝子変異の検出が感度に優れていると考えられた。 初年度はRAS遺伝子、PT53遺伝子、epidermal growth factor receptor (EGFR)遺伝子をターゲットにプライマー作成を試みた。RAS遺伝子ではcodon 12, 13の突然変異を認識する良好なプライマーが得られ、培養細胞を元にした検出システムを確立した。EGFR遺伝子はLAMPによる増幅反応が見られ、反応時間の短縮のためにループプライマー設計を行っている。PT53遺伝子は安定したLAMP増幅反応が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PT53遺伝子は安定したLAMP増幅反応が得られなかった。具体的には、PT53遺伝子変異のホットスポットであるアミノ酸残基245, 248, 249をカバーするプライマーセットを設計し、複数の口腔癌細胞株を中心に検出を試みたが、PT53 wild typeと比較すると反応時間の遅延や完全な抑制が見られた。 その理由として、口腔癌ではPT53遺伝子に高頻度に変異が見られるものの、変異の生じている部位が広範囲にわたり、かつその種類が多岐にわたることが知られている。本法は遺伝子増幅のために4種類以上のプライマーを用いるため、一般的に用いられている核酸増幅技術であるpolymerase chain reaction法と比べて、プライマーのアニーリング部位の遺伝子変異は反応阻害に重要なファクターであると考えられる。 現在、この現症の原因を明らかにするためにDNA塩基配列の解読を進めている。原因が明らかとなれば、この反応遅延・消失の現象を利用して、「Wild typeのPT53のみを検出する核酸増幅技術」の開発に応用が可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究課題は、大きく以下の4つである。1)RAS遺伝子変異検出システムにおけるテンプレート(非精製検体や、パラフィンブロックおよび細胞診材料からの増幅)を検討する。2)EGFR遺伝子変異検出システムにおけるループプライマーの設計とシステム反応条件の決定ならびに、あらかじめ変異の明らかとなっている複数の細胞株を新規購入し、反応特異性の検討をおこなう。3)PT53遺伝子変異検出システムにおける反応遅延・消失の原因解明のために、DNA塩基配列の解読を進め、「Wild typeのPT53のみを検出する核酸増幅技術」の開発をめざす。4)検出強度のレベリングに用いるハウスキーピング遺伝子の選定と、レベリングの方法を検討する。候補遺伝子はプライマー設計完了の見込みである。またレベリング方法は、反応開始から核酸増幅が始まるまでの時間を、対象とする遺伝子とハウスキーピング遺伝子それぞれについて記録し、その比をもって遺伝子発現強度とすることを想定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
PT53遺伝子のプライマー設計で適切な領域を絞り込むのにやや難航した。すなわち、PT53遺伝子の変異はイントロンの広域にわたり生じ、かつその種類が多岐にわたるため、安定したLAMP増幅反応を可能にするプライマーセットの設計が困難であった。 翌年度直接経費のうち「その他」の項目で計上するプライマー合成に、本年度にプライマー合成に使用予定であった繰越金を合わせて使用する。特にPT53遺伝子の変異に対する基本プライマー一式(4種)と、EGFR遺伝子のループプライマー合成あるいはより効率的なLAMP反応を可能にする基本プライマー合成に使用する計画である。
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