研究課題/領域番号 |
25462934
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 直行 日本大学, 歯学部, 助教 (20386080)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実験腫瘍学 / 新規遺伝子増幅法 / 診断マーカー |
研究実績の概要 |
本研究では、発がんや薬剤の奏功率に関わる遺伝子変異(塩基配列の異常)を迅速に検出する技術を開発することを企画した。本法は、新規の核酸増幅技術である、loop-mediated isothermal amplification(LAMP)を元にしている。LAMP法は、従来から利用されているPCR法と比較して、短時間に特異性の高い核酸増幅が可能である。 本法はLAMP法の反応液に加えて、ターゲットとするがん遺伝子が野生型である場合にLAMP反応を阻害する物質を添加することで、EGFR遺伝子の変異を検出する方法である がん遺伝子である上皮成長因子受容体(EGFR)の一部に変異がある場合は、EGFRチロシンリン酸化阻害剤(ゲフィチニブ、エルロチニブ)の奏功率が高いことが知られている。この領域に対する特異プライマーを設計した。遺伝子増幅とその検出には、OptiGene社のGenie IIを用いた。検体は、EGFR遺伝子に変異が生じていることが知られているがん細胞(変異株)4種と、変異の起きていない細胞株(野生株)3種について検索した。それぞれの細胞からDNAを抽出・精製した。また、細胞から得られた粗抽出液を作製した。DNAおよび粗抽出液を検体として、1検体につき、本法と通常のLAMP法のそれぞれを行った。 その結果、DNAを鋳型に用いた場合、EGFR変異株では本法とLAMP法では遺伝子が増幅されるに要した時間はどちらも15分程度であった。一方で、EGFR野生株では、本法では遺伝子増幅が有意に抑制され、遺伝子増幅までに45分程度を要したが、LAMP法で遺伝子増幅に要した時間は15分程度と変異株と同程度の時間で検出された。粗抽出液を用いて検討した結果、遺伝子増幅に要す時間が1~5分程度の延長したものの、その結果はDNAを用いた実験と一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上皮成長因子受容体の遺伝子変異検出システムが確立され、その進捗状況は良好である。
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今後の研究の推進方策 |
上皮成長因子受容体の他に、がんの進行を左右する遺伝子や、薬剤耐性に係わる遺伝子の変異を検出するシステムを構築する。具体的には、KRAS、NRAS、BRAF、ALKをターゲットとする予定である。 また、がん組織から得られた検体を用いて本法を行い、遺伝子変異の有無とがんの振る舞い(広がり、増大するスピード、病理組織学的な組織型と分化度)との関係を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進行しているが、使用する物品(主にプラスチック製品)を予定より安価なものに変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子配列の確認のために、受託解析サービスを利用するため、これに充当する。
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