研究課題
根尖性歯周炎の原因は根管内の細菌感染である。しかし感染根管から検出される細菌は多種多様で、根尖歯周組織に対する病原性が特に強い細菌種はまだ特定されていない。根管内に棲息する細菌の総量や、細菌集合体であるフローラ自体が病原性を発揮している可能性もある。本研究では根管内フローラをパンゲノムとして捉え、その構造や機能特性を解明し、歯内治療ストラテジーへの応用を模索した。インフォームドコンセントの得られた根尖性歯周炎症例において、①根管治療前、②根管の拡大形成後 ③根管充填直前の計3回、根管壁を手用ファイルで切削し象牙質を採取した。試料は実験室に移送し生理食塩水を加えて均一分散化後、専用機器を用いて細菌数を計測した。さらに嫌気ボックス内で10倍連続希釈し血液寒天培地に接種、37℃で1週間嫌気培養した。残った試料は培養を経ずにPCR増幅しpyrosequencingを行い、メタゲノム解析した。嫌気培養後、CFUを求め、生育したコロニーを継代純培養しDNAを抽出、PCR増幅しシークエンスを決定、Blast search解析により菌種を同定した。迅速計数は嫌気培養で求めたCFUよりつねに約4~100倍近く大きい値を示し、培養困難菌の存在によりCFUが低下するだけでなく、象牙質削片試料を用いると装置の測定誤差(過大に計数)をもたらす可能性が窺われた。本年度解析した6症例から嫌気培養を通じて123コロニーが得られた。Propionibacterium属が67コロニーと最も多く、5症例から検出された。P. acidipropionici、P. propionicum、Enterococcus faecalisの単一感染が各1例認められた。術前の臨床所見から感染菌種数の多寡を推測することは困難であったが、単一感染でも重複感染でも通法の機械的化学的根管の拡大形成により感染制御可能であった。
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