研究課題/領域番号 |
25462948
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中島 正俊 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (50272604)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色調適合性 / コンポジットレジン修復 / エナメル質 / 象牙質 / エナメル質窩縁 |
研究概要 |
コンポジットレジンなどの半透明性材料が周囲媒体との境界部において、周囲色調を反映することにより、色調変位を起こし、これにより境界部の色差が不明瞭となり、あたかも色調が適合しているかのように見えることがある。これをカメレオン効果(Color adjustment効果)と呼ぶ。コンポジットレジンのカメレオン効果の優劣は、歯と修復物との色調適合性に大きく影響を与えるものと考えられるが、カメレオン効果発現を検討した報告、およびそのメカニズムに関する報告はほとんど見当たらない。また、修復物窩縁を構成する他方の媒体であるエナメル質も半透明性を持っていることを考えると、窩縁形態やその処理法もカメレオン効果の発現に大きな影響を及ぼすものと考えられる。 その中で、エナメル質窩縁(修復物辺縁)をどのように処理すれば良いのかといった問題に対して、エビデンスを与える研究はまったく為されていない。 また、これまで歯牙の色調は象牙質の色調が大きく影響することが指摘されてきたが、エナメル質の果たす役割についての報告は少なかった。本年度では、エナメル質窩縁の形態がコンポジットレジン修復物の色調適合性に及ぼす影響を評価するため、あらたな評価方法を確立し、エナメル質窩縁にべベルをつけることにより、コンポジットレジン修復物と周囲歯質の色調適合性が向上することを明らかにした。また、歯牙色調はエナメル質にも影響されることが明らかとなり、とくにエナメル質の屈折率が歯牙の色調変化に重要な影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、コンポジットレジン修復物と周囲歯質との色調適合性の向上を目指し、その影響因子を明らかにすることで、色調適合性に優れたコンポジットレジン材料の開発とその臨床技法の構築を図るものである。 その中で本年度はまず、エナメル質に着目し、エナメル質が歯牙色調に果たす役割について明らかにすることができた。この成果は、エナメル質色コンポジットレジンにどのような特徴を付与する必要があるかについて示唆するものである。また、色調適合性におよぼすコンポジットレジン修復におけるエナメル質窩縁形態について明らかにできたことは、その臨床技法の確立に寄与するものであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
コンポジットレジン修復物と歯牙の色調適合性を詳細に検討するために、測定試料の作成方法および窩縁部微小領域の測色方法を確立し、得られたデータをもとにカメレオン効果発現の評価方法を策定する。そののち、コンポジットレジンの種類、充填方法の違いおよび、窩縁形態や窩洞の大きさ・部位の違いが、色調適合性に及ぼす影響について評価・検討を行う。また、色調適合性に大きく影響を及ぼすと思われるコンポジット‐エナメル質界面における光の散乱様態を評価するために、SS-OCT((近赤外光干渉断層撮影装置)を用いて界面部の屈折率変化を測定し、エナメル小柱の走向や窩縁処理方法などの影響について検討を行う。さらに、用いたコンポジットレジンの透過光特性を測定し、どのような透過光特性を持つコンポジットレジンが色調適合性に優れているか推定し、その結果をもとに、フィラー形態、配合量ならびにマトリックスレジンの種類などを検討しながら、優れた色調適合性を示すコンポジットレジンの開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度残余額の一部については、年度内に物品(消耗品)として購入手続きを行ったものの、精算が次年度になったものである。また、残りの金額は、色彩分析ソフトの購入を予定していたが、残余額が足りず次年度予算と合算して使用予定である。 翌年度助成金と合算して、色彩分析ソフトの購入を予定している。
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