研究課題/領域番号 |
25462952
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉羽 永子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10323974)
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研究分担者 |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30220718)
大倉 直人 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (00547573)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | α-SMA / dental pulp / culture / fibrillin-1 / TGF-β1 / pSmad2/3 |
研究実績の概要 |
α-smooth muscle actin(α-SMA)は細胞骨格タンパクの1つであり、正常の組織では血管の平滑筋細胞や周皮細胞(pericyte)に発現する。また幹細胞や前駆細胞のマーカーとしての可能性が示唆されている。一方、創傷治癒過程では、α-SMAを発現する線維芽細胞が出現し、筋線維芽細胞と呼ばれている。筋線維芽細胞は、様々なサイトカインをはじめ多様な細胞外基質とその分解因子を分泌し、創傷治癒に重要な役割をしているとされている。本研究の目的は、歯髄組織創傷治癒再生時におけるα-SMAを発現する細胞に着目し、それらの歯髄組織の修復・再生への関与を解明することにある。 平成26年度においては、これまでのin vivoで得られた結果を検証するために、in vitroにおいて解析を行った。すなわち、筋線維芽細胞の誘導因子であるTGF-β1のリザーバーとして知られている細胞外基質fibrillin-1とα-SMAの誘導の関連性について、歯髄組織再生モデルのtooth slice cultureを用い、次のような結果を得た。(1)歯髄組織を無血清下で培養すると、線維芽細胞に加え象牙芽細胞やシュワン細胞もα-SMA陽性を呈し、遺伝子の発現も有意に増加した。(2)Fibrillin-1タンパクは分解され、遺伝子の発現も有意に低下した。 Fibrillin-1は分解されることで活性型TGF-β1を遊離することが知られている。(3)Fibrillin-1タンパクの分解を阻害すると、筋線維芽細胞は観察されなかった。(4)TGF-β1のリセプター阻害剤を添加して培養すると、α-SMAの発現が認められなかった。一方fibrillin-1の分解は認められた。(5)リン酸化Smad2/3(pSmad2/3)とa-SMAの共染色では、培養3日後をピークにpSmad2/3の核内移行が確認され、その後にpSmad2/3とa-SMAの共陽性細胞が出現した。一方、TGF-β1の遺伝子発現量は培養3日間は低下していた。 これらのin vitroの結果はin vivoにおけるα-SMAとfibrillin-1の発現の変化を裏付けるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人歯髄組織の創傷治癒、再生過メカニズムを解析するには、限界がある。 この歯髄組織再生モデルのベースを明らかにすることで、今後更にこのモデルを用い、多角的なアプローチが可能となることでの達成度は大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
筋線維芽細胞と細胞外基質は、歯髄創傷治癒、再生過程において重要な役割を担っている。 このtooth slice cultureを用い、最終的には、歯髄象牙質複合体の再生メカニズムにつなげる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトの tooth slice culture の解析に時間がかかり、動物実験まで進めなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、動物実験がすでに開始されており、前年度の差額予算をあてている。
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