研究課題/領域番号 |
25462958
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 雄介 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60397693)
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研究分担者 |
前薗 葉月 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (00613390)
豊澤 悟 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30243249)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯学 / 覆髄 / 象牙質 / 歯髄 / 再生 / MMP分子 / 象牙質-歯髄複合体 / 第三象牙質 |
研究概要 |
平成25年度の研究実施計画に基づき、ヒト象牙質基質タンパク(Dentin Matrix Proteins: DMPs)の分解産物が歯髄細胞の遊走能および血管新生能に与える影響について検討し、さらにDMPs分解産物の同定を行った。 1.これまでにわれわれが分離したDMPsに、象牙質に内在性に存在すると報告がある各種matrix metalloproteinase(MMP)ファミリー分子を37℃で24時間作用させ、DMPs分解産物を生成した。得られた分解産物存在下において、ラット歯髄由来初代培養細胞の遊走能に与える影響について検討をおこなった(scratch-wound assayおよびtrans-well assay)。その結果、scratch-wound assayではMMP1, MMP3およびMMP9によって形成された分解DMPsの存在下において、歯髄細胞の遊走能は促進された。一方、trans-well assayにおいてはMMP1, MMP3, MMP9およびMMP20で誘導された分解DMPsの存在下で歯髄細胞の遊走能は促進された。 2.実験1と同様にDMPs分解産物存在下において、ヒト臍帯静脈内皮細胞とヒト皮膚線維芽細胞を共培養し、血管新生能について評価を行った。その結果、MMP1, MMP2およびMMP3によって形成されたDMPs分解産物の存在下において、上記細胞の血管新生能は促進された。 3.DMPs分解産物のどの領域が歯髄細胞の生理活性を上昇させるかを明らかにするために、分解産物の同定を行った。SDS-PAGEにて分解DMPsのタンパクプロファイルの確認を行い、高速液体クロマトグラフィにて得られたタンパクの解析を現在行っている。 以上の結果より、象牙質に存在するMMP分子によって分解されたDMPsは歯髄細胞の遊走能および血管新生能を促進することが明らかとなった。このことより、第三象牙質の形成メカニズムの一端が明らかとなり、分解DMPsが象牙質-歯髄複合体の治癒に影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DMPs分解産物を用いた細胞の遊走能および血管新生能の評価実験は順調に進行しているが、分解DMPsの同定実験については完了しなかった。その理由は、分解DMPsが細胞へ与える影響の実験に想定よりも時間を要したため、それに伴ってどのMMP分子により誘導された分解DMPsを同定すべきかを決定するのに時間を必要とし、その結果平成25年度内に同定実験を完了することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に達成しきれなかったDMPs分解産物の同定実験の継続を予定している。また、DMPs分解産物によって歯髄細胞の機能が促進されることがこれまでに明らかとなったが、さらにin vivoにおいてDMPs分解産物を用いたラットの覆髄実験を行い、歯髄の治癒および第三象牙質の形成について病理組織学的に評価を行う予定である。さらに同定されたタンパクもしくはペプチドの組換え体タンパクを作成し、そのタンパクが歯髄細胞の増殖、石灰化、遊走能、血管新生能および歯髄細胞の分化マーカーなどに与える影響についても評価を行う予定である。
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