研究課題/領域番号 |
25462964
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
作田 哲也 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (20284888)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 歯周病 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
本研究は、糖尿病患者(2型)に対して、最も使用されているDipeptidyl peptidase (DPP)-4阻害薬およびGlucagon-like peptide (GLP)-1受容体作動薬からなるインクレチン関連薬が、歯周炎の発症機序あるいは増悪機序に対して、どのような影響を与えるかについて網羅的に明らかにすることを目的としている。 ■ 研究方法:1)ヒト歯肉線維芽細胞を Prevotella intermediaよりフェノール温水法にて抽出したリポポリサッカライド(LPS)で刺激し、同細胞からのインターロイキン(IL)-6の産生量をEnzymed Linked Immunosorbent Assay (ELISA) で測定した。2)1)で示した培養条件において、GLP-1受容体作動薬(エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド)の前処理によって、ヒト歯肉線維芽細胞において産生されるIL-6がどのような影響を受けるかを調べた。 ■ 結果と考察:P. intermediaのLPSはヒト歯肉線維芽細胞に対してIL-6の産生を誘導するが、リキシセナチドはその産生を抑制することを明らかにした。現在、他の歯周組織構成細胞(歯根膜細胞や歯肉上皮細胞)における反応を検討しているが、GLP-1受容体作動薬が歯肉線維芽細胞の炎症性サイトカインの発現に対してどのような影響を与えるかという報告は現在ほとんど見られない。本年度の研究結果はリキシセナチドが抗炎症作用を持つことを示唆するものであり、GLP-1受容体作動薬の新たな膵外作用を示唆するものである。今後、ヒト歯肉線維芽細胞におけるGLP-1受容体の発現についても解析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ヒト歯肉線維芽細胞、ヒト歯髄細胞とヒト歯根膜細胞における炎症性サイトカイン等の産生に対して、インクレチン関連薬であるエキセナチド、リラグルチドと新しくリキシセナチドがどのような影響を与えるかについて網羅的に解析を行ってきた。 ■ ヒト歯根膜細胞における作用:ヒト歯根膜細胞は炎症惹起物質の一つである腫瘍壊死因子(TNF-alpha)の刺激でIL-6を産生するが、リラグルチドの前処理+共刺激によってその産生は抑制されることが明らかとなった。 ■ ヒト歯髄細胞における作用:感染根管内に存在するPrevotella intermedia のLPSを供試した。P. intermediaのLPSはヒト歯髄細胞においてIL-6の産生を増強するが、エキセナチドの共存刺激によって濃度依存的にその産生を抑制した。 上記の解析結果に今年度のヒト歯肉線維芽細胞における結果を合わせると、ヒト歯周組織構成細胞の一部と歯髄細胞において、GLP-1受容体作動薬は、少なくとも炎症性サイトカインの一つであるIL-6の産生に対して抑制的に作用することが示唆された。本研究はヒト歯周組織構成細胞や歯髄細胞の炎症発症機序に対してインクレチン関連薬がどのような影響を与えるかについて網羅的に明らかにすることを目的としており、口腔のいくつかの炎症性疾患に対するGLP-1受容体作動薬の抗炎症性作用が期待できるかもしれない。
|
今後の研究の推進方策 |
現在まで、本研究ではインクレチン関連薬であるGLP-1受容体作動薬は、ヒト歯周組織構成細胞の一部と歯髄細胞において、炎症性サイトカインの一つであるIL-6を指標とすると、抗炎症性に作用することが示唆された。それぞれの作動薬においてその作用には細胞ごとに差が見られる。これらが細胞特有のものなのか、各種細胞における多様性によるものなのかは明らかになっていない。また各種細胞がGLP-1受容体を発現しているかについても検討が必要であると考えられる。 ■ 研究方法: 1.ヒト歯肉線維芽細胞、ヒト歯髄細胞とヒト歯根膜細胞を P. intermediaのLPSあるいはTNF-alphaで同時に刺激し、それぞれ細胞からのIL-6の産生量をELISAで測定する。またその産生に対するGLP-1受容体作動薬(エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド)の影響について検討する。 2.上記の細胞について、いくつか起源の異なるロットを用意し、同様の作用が認められるかどうかを検討する。 3.ヒト歯肉線維芽細胞、ヒト歯髄細胞とヒト歯根膜細胞におけるGLP-1受容体の発現をRT-PCRとWestern blot法により解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験結果に対する追試を幾度か重ねたため、新たな実験系を組み立てるのに必要な物品の購入が遅れたためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品については6月中に発注を終える予定である。
|