研究課題/領域番号 |
25462967
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
坪田 圭司 日本大学, 歯学部, 助教 (20386113)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 直接支台築造法 / 接着性 / 表面自由エネルギー / 光強度 |
研究概要 |
最近の齲蝕治療のコンセプトに沿った歯質保存的修復治療の一環として,失活歯の残存歯質を構造的に強化することによって,口腔内におけるその機能を保持させることを目指して,歯質接着性のあるレジンを支台として用いるために,根管内象牙質に対する接着性の研究を企画した。この研究を進めるにあたっては,接着試験というパラメータ以外に,象牙質およびアドヒーシブシステムの界面性状からも検討を加えるものとした。これらは,接着の予後に影響を及ぼす重要な因子と考えられている。界面性状の評価においては,界面化学的な手法利用する。すなわち,接触各測定器を用いて,被着対象である根管内象牙質のアドヒーシブ処理後の接触角を測定することによって,表面自由エネルギーを算出し,接着界面で生じている現象あるいは接着界面を構成する部材の相互作用を評価することでひとつの考察に資す。 1年目は,支台築造用レジンを用いて初期接着強さの測定を行った。この接着強さの測定は,試片の作製直後から経時的に行うとともに走査電子顕微鏡を用いて形態学的に観察し根管内象牙質に対する接着性について考察した。その結果,初期における象牙質接着強さの経時的変化は接着システムの重合システムおよび光線照射の有無に影響を及ぼすことが判明した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯冠崩壊が著しい失活歯症例は,印象採得後にメタルを用いた支台築造が用いられてきた。この方法は技工操作に伴う制約から便宜的な健康歯質の削除を余儀なくされている。また,装着には合着用セメントを用いるために応力集中により,歯根破折などの危険性が指摘されている。この歯根破折の報告は増加傾向にあることから,失活歯に対してMIの概念に基づき健全残存歯質を可及的に保存し,その機能の保持を目指した直接支台築造法が臨床で応用されている。しかし,直接支台築造用レジンを用いた歯冠修復法において,高い予知性を得るためのエビデンスは,十分とは言えないのが現状であることから,本研究は支台築造歯冠修復法の確立を目的とする。現在までは,光線の照射強度が初期象牙質接着性に及ぼす影響について接着試験および電子顕微鏡による接合界面の解析に関しては順調に進んでおり,学会での発表も既に行っていることから研究はおおむね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
接着試験 1)被着象牙質:被着根管内象牙質としては,ウシ前歯新鮮抜去歯の根管内象牙質とする。すなわち,接着試片の製作に際し,これを縦断し歯髄組織を除去した後,超音波洗浄を5分間行い,エアシリンジで乾燥したものを用いる。 2)接着強さ試験:接着強さ試験では接着耐久性について検討するため,各製造者指示条件に従って支台築造用レジンと接着させる。37℃精製水中に24時間保管した後に,サーマルサイクル(サーマルショックテスター,トーマス化学器械)を負荷する。接着強さの測定は剪断接着試験用治具に試片を取り付け,万能試験機を用いて,その剪断接着強さの測定を行う。また,接着強さを測定した試片については,走査電子顕微鏡を用いて詳細な破壊形式の判定を行う。 3)接合界面の観察:象牙質と築造用レジンの接合界面の観察を行うために,接着強さ試験と同様に製作した試片をエポキシ樹脂に包埋した後,金蒸着後,走査電子顕微鏡を用いて処理面の観察を行う。形成された樹脂含浸象牙質についても同様に観察する。 4)弾性率の測定:サーマルサイクルを負荷した支台築造用レジンに対する超音波の伝播時間の測定は,パルスレシーバーを用い,音響レンズ前面に先端直径3mmの超音波収束機構を有するコーン状チップを接続して行う。このチップ先端を試片に接触させ,試片中を伝播する送信波と反射波との時間的な差を求め,得られた値と理論式とから音速,音響インピーダンス,ポワソン比および弾性率を求め,劣化状況と測定された超音波特性および接着耐久性との関連性について検討を加える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
学会の発表時期に合わせて,接着試験および表面自由エネルギー測定に供試する実験材料数を減らしたために繰越金が生じたが,研究計画の変更を行っているため,今後の研究に支障はないものと考えられる. 平成25年度の繰り越し分に関しては今後の学会発表および論文発表に向けて追加実験に向けて使用する予定で研究計画の修正を行った,すなわち,繰り越し分は接着耐久性試験を行うための支台築造用レジンの購入費として使用するものとして,研究は現在遂行されている.また,修正後の研究計画に関しては研究者のエフォート的にも問題はない.
|