研究課題/領域番号 |
25462969
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
西山 典宏 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (90112953)
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研究分担者 |
藤田 光 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (00147737)
内田 僚一郎 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (10623960)
會田 雅啓 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (40147715)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯質接着 / ワンステップボンディング材 / 歯質接着性モノマー / MDP / NMR / カーブフィッティング / XRD / MDPのカルシウム塩 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまで,エナメル質または象牙質粉末をワンステップボンディング材中に懸濁して,遠心分離した後,ボンディング材上澄み液の13C NMRスペクトルを測定し,反応前後における10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate(MDP)に帰属される13C NMRピークの強度変化からMDPのカルシウム(MDP-Ca)塩の生成量を決定してきた。 しかし,この解析手法では,ワンステップボンディング材を臨床で歯質に作用させる時間,すなわち,20~30秒に設定するのが困難であること,また上澄み液を解析しても第二リン酸カルシウム(DCPD)に関する情報が得られないことなどの問題があった。これらの諸問題を解決するため,エナメル質または象牙質をワンステップボンディング材と反応させた後,過剰のエタノールを添加し,さらなる歯質成分の脱灰反応を抑制した状態で遠心分離によりエナメル質および象牙質反応残差を回収し,回収残渣を固体31P NMR法および粉末X線回折法を用いて解析することとした。 本研究では,ワンステップボンディング材(MDPの添加量:116.1 mg/g)とエナメル質または象牙質の反応時間(0.5,1,5,30,60,または1440分)がMDP-Ca塩およびDCPDの生成量に及ぼす影響を検討した。 まず,MDPと塩化カルシウムをエタノール水溶液中で反応させ,MDP-Ca塩のモデル化合物を合成し,31P NMRスペクトルを測定した後,波形分離法を用いて検出されたNMRピークを解析したところ,化学構造の異なる数種のMDP-Ca塩が生成されることがわかった。 つぎに,エナメル質および象牙質反応残差の31P NMRスペクトルの波形分離を行い,脱灰過程を通して生成されるMDP-Ca塩およびDCPDの生成量の決定,さらにMDP-Ca塩の分子種の同定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ワンステップボンディング材へのMDPの添加量がMDP-Ca塩およびリン酸カルシウムの生成量および生成されたMDP-Ca塩の分子種に及ぼす影響を検討することを目的として,MDPの添加量の異なるワンステップボンディング材(MDPの添加量:0,25.6,49.9,80.5,116.1 mg/g)を調製した。これをエナメル質および象牙質粉末と30秒間反応させた後,過剰のエタノールを添加し,さらなる脱灰反応を抑制した状態で,遠心分離することによりエナメル質および象牙質反応残渣を回収した。これまでに,得られたそれぞれの試料の固体31P NMRスペクトルおよびX線回折パターンの測定を行った。現在,エナメル質または象牙質の脱灰過程を通して生成されるMDP-Ca塩およびDCPDの生成量を決定し,さらに生成されたMDP-Ca塩の分子種を同定するため,31P NMRスペクトルの波形分離を行っているところである。 また,ワンステップボンディング材に含まれるアセトン水溶液中の水の割合がエナメル質または象牙質の脱灰過程を通して生成されるMDP-Ca塩およびDCPDの生成量,さらにMDP-Ca塩の分子種に及ぼす影響についても検討している。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画では,カルボキシ基を有するアミド系およびメタクリル系モノマーを添加したワンステップボンディング材を試作し,このボンディング材を象牙質に作用させた場合の上記モノマーのカルボキシ基がカルシウムイオンをトラップし,リン酸カルシウム塩の生成量を抑制する効果および歯質接着性に及ぼす影響について検討することを予定していたが,中止することにした。この理由として,上記モノマーのカルシウム塩は水に溶解する可能性が高いこと,さらに,MDPのリン酸基の方が上記モノマーのカルボキシ基より電離しやすいため,カルボキシ基がカルシウム塩を形成する可能性が低いことなどが挙げられる。 そこで,ワンステップボンディング材(MDPの添加量:49.9 mg/g)を用い,このボンディング材に含まれるアセトン水溶液中の水の割合が,エナメル質または象牙質の脱灰過程を通して生成されるMDP-Ca塩およびDCPDの生成量,さらにMDP-Ca塩の分子種に及ぼす影響,さらに歯質へのワンステップボンディング材の接着強さおよび接着耐久性に及ぼす影響を検討する。これらの結果を基に,次世代の新規ワンステップボンディングシステムを構築する。 <化学分析>(担当 西山典宏,藤田 光) アセトン水溶液中の水の割合の異なるワンステップボンディング材(MDPの添加量:49.9 mg/g)をエナメル質または象牙質粉末と反応させた後,得られた反応残渣を固体の31P NMR装置,X線回折装置を用い分析を行う。 <接着耐久性試験>(担当 會田雅啓) アセトン水溶液中の水の割合の異なるワンステップボンディング材(MDPの添加量:49.9 mg/g)を用いてエナメル質または象牙質にコンポジットレジンを接着し,サーマルサイクル前後におけるボンディング材のエナメル質,象牙質に対する圧縮せん断接着強さを万能試験機にて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
第93回国際歯科会議(開催地:ボストン)に参加した際の旅費の決済が間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験試薬の購入にあてる。
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