研究課題/領域番号 |
25462975
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
向井 義晴 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40247317)
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研究分担者 |
浜田 信城 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20247315)
富山 潔 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (90237131)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオフィルムモデル / イオン徐放性微粒子 / 齲蝕予防 |
研究概要 |
多種イオン徐放性微粒子を含有する歯磨剤と通常のNaF含有歯磨剤の象牙質脱灰抑制効果をバイオフィルムモデルを用いて検討した。その結果、生菌数では微粒子含有歯磨剤がNaF歯磨剤に比較し低い傾向を示し,またミネラル喪失量の比較においても前者が後者に比較し有意に低くなった.本結果は,本微粒子がストロンチウムイオンやホウ酸イオンを徐放し,これらが緩衝作用あるいは抗菌作用を表すとともに,同時に徐放されるフッ化物イオンと相まって優れた脱灰抑制を誘導した可能性を示唆し,口腔内環境が悪化した場合の有効な口腔衛生手段に利用できると考えられた.本結果は現在論文執筆中である.一方,これらの研究では象牙質の脱灰を明確に誘導するため非緩衝培地を用いた.そのため,象牙質の脱灰が抑制された微粒子群では低下したpHが細菌種を淘汰し耐酸性細菌優勢な環境を作り出すことにより細菌数が減少し,一方脱灰が進行したNaF群では環境が中和されより多くの細菌種が生存したとも考えられた.口腔内ではこの結果が真実である可能性は高いが,環境を統一した中での純粋な微粒子含有歯磨剤ならびに洗口剤の効果を検討するためbuffered McBain培地およびガラス試片を用いた研究を行った.その結果,培養後の培地のpHは,培養期間中pH6.2~7.0であったことより,buffered McBain 2005培地は中性領域の良好な緩衝作用を示したが,微粒子含有歯磨剤及び洗口液の有意な抗バイオフィルム形成能は認められなかった.これは歯磨剤に含まれる界面活性剤がバイオフィルム内に拡散する可能性を示唆するものであり,さらなる検討が必要である.以上の結果は,平成25年度日本歯科保存学会春季学会にてポスター発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多種のイオンを徐放する微粒子含有歯磨剤はNaF含有歯磨剤に比較し歯質の脱灰を効果的に抑制することを報告したが,それが徐放イオンの緩衝作用によるものか,抗菌作用によるものかは未だ明確ではなかったため,微粒子含有歯磨剤およびその溶出液がバイオフィルム形成に与える影響を検討した. その結果,微粒子含有歯磨剤および溶出液の抗菌効果が低い可能性が考えられたが,一方でその緩衝作用が脱灰環境を中和していると考えられる結果を得ていることから,今後の本剤の製品化・臨床応用に向けての研究は予定通り進行していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は 溶出イオンが蓄積するような隣接面バイオフィルム等を想定し,イオン徐放性微粒子溶出液あるいは同濃度のフッ化物イオンを含む培養液中でバイオフィルムを作製し,総生菌数から抗菌効果の有無を明確にし研究発表、論文作成を行うとともに、これまでのデータをメーカーに提供し製品開発進めていく予定である.以下予定する研究方法の概要を示す。1) ポリマイクロバイアルバイオフィルム(PMB)の作製:今年度と同様、24-well culture plateの上蓋内面に取り付けられたクランプにカバーグラスを固定後,健康な被験者1名の刺激唾液を用い,Exterkateらの方法(Caries Res 2010)に従ってバイオフィルムを作製する.実験開始から24時間後と34時間後に以下の各種培養液を用いて処理し48時間後まで嫌気培養する.2) 試験培養液の作製:イオン徐放性微粒子を蒸留水に懸濁して各種イオンを溶出させた上清の溶出液(110.5 ppm F)を用いて溶出液含有培養液(0.2%スクロース,50 mM PIPES含有)を作製後,buffered McBain 2005(0.2%スクロース,50 mM PIPES含有)培養液で2倍および10倍希釈した溶出液含有培養液を調整する.また,溶出液と同濃度のフッ化物を含むNaF含有培養液(0.2%スクロース,50 mM PIPES含有)を作製後,buffered McBain 2005(0.2%スクロース,50 mM PIPES含有)培養液で同様に2倍および10倍希釈したNaF含有培養液を作製する.対照として,buffered McBain 2005(0.2%スクロース,50 mM PIPES含有)培養液(Cont群)を使用する.3) 生菌数測定:培養48時間後にPMBが形成されたカバーグラスを2 ml cysteine peptone waterに浸漬し超音波処理によりカバーグラスに付着した細菌を剥離,分散後,血液寒天培地に塗沫して生菌数を算定する.4) 統計分析:実験群間の比較はOne-way ANOVAおよびGames-Howellにより有意水準5%で行なう.
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