研究課題
多種イオン徐放性フィラーであるsurface pre-reacted glass ionomer(S-PRG)フィラーは,フッ化物,ストロンチウムおよびホウ酸などのイオンを放出し,歯質の脱灰抑制のみならず,口腔細菌に対して抗菌活性を示すことが報告されており,口腔内環境を良好な状態に保つための一つの選択肢となり得る可能性を秘めている。ポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルは口腔内の多種細菌をin vitroで培養できるモデルとしてExterkateら(ACTA)が開発したモデルであるが,我々は本法を改変し使用することにより,平成26年度はS-PRGフィラー溶出液含有培養液がカバーグラス上に形成されたポリマイクロバイアルバイオフィルムに対しNaF含有培養液よりも効果的な抗菌効果を示すことを報告し,本結果は日本歯科保存学雑誌に掲載された.最終年度は形成されたバイオフィルムに対して本溶出液による60分間の処理効果を検討したところグルクロン酸クロルヘキシジンには及ばないものの非処理に比較して有意な抗菌効果を示すことを確認した.この結果はS-PRGフィラーから溶出されたホウ酸イオンの抗菌効果である可能性があり,トレー法などによるS-PRGフィラー溶出液処理の有用性が示唆された.さらには,S-PRG含有歯磨剤ならびに同濃度のフッ化物を含有するNaF歯磨剤を用い,ポリマイクロバイアルバイオフィルムへの抗菌効果ならびに象牙質基質の脱灰抑制効果を検討した.その結果,S-PRGフィラー含有歯磨剤はNaF歯磨剤に比較して有意なpH低下抑制,細菌増殖,ならびに象牙質脱灰抑制を示すことが確認された.本結果は現在国際誌に投稿中である.
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Dental Materials Journal
巻: 35 ページ: 70-75
10.4012/dmj.2015-135