研究課題
本年度は熱ショックタンパク質誘導剤による新規生物学的覆髄法を臨床の場で応用するために必要な各種の知見を得るため、以下の研究を行った。初めに炎症が象牙質形成に与える影響について確認するため、炎症性サイトカインであるIL-1βおよびINF-γ刺激による象牙芽細胞様細胞の分化および象牙質形成能への影響を確認した。その結果、INF-γは象牙芽細胞分化マーカーであるDMP-1の発現を低下させアルカリフォスファターゼ活性を抑制し、象牙質形成阻害作用が確認された。一方、この阻害作用はIL-1βを同時に作用させることで低下することが確認され、これらの炎症性サイトカインは象牙質形成に拮抗的な作用を示すことが示唆された。続いて、歯髄組織の炎症制御を目的とした研究を行った。覆髄処置が必要とされる歯の歯髄は炎症状態にあり、早急に適切な炎症制御がなされなければ重篤化し歯髄壊死が引き起こされ、覆髄の適用が不可能となる。Macromolecular Translocation Inhibitor Ⅱ(MTI-Ⅱ)は酸性の核タンパク質であり、炎症応答において主要な役割を果たすNF-κBを阻害する。本年度の研究結果から、MTI-ⅡはTNF-αにより象牙芽細胞様細胞に誘導されたNF-κBの転写活性を阻害し、歯髄炎の制御に有用であることが確認された。さらに神経細胞生存維持機能を有するGDNFが象牙芽細胞様細胞の生存維持、増殖に有効であることも確認した。次に、覆髄後に創傷治癒を促進し適切な量と緻密で質の高い象牙質の形成を誘導するために、様々な成長因子を高濃度に含む多血小板血漿(PRP)の応用を検討した。その結果、PRPは象牙芽細胞様細胞の分化および石灰化能の亢進を誘導することが示唆された。以上の研究から、これまでに明らかにした熱ショックタンパク質発現による象牙芽細胞様細胞の耐性向上に加え炎症制御、象牙質形成促進を組み合わせた新規の生物学的覆髄法を確立するための知見を得ることができた。
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