研究課題/領域番号 |
25462981
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
稲垣 亮一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (60260444)
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研究分担者 |
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30431589)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジルコニア / クラウン / 強度 / 厚み / CAD/CAM |
研究概要 |
H25年度は当初の計画に基づいてオール・ジルコニアクラウンの軸面および咬合面の厚みが破折強度に及ぼす影響をを調べた。下顎右側第一大臼歯模型を形成し、シャンファー幅(0.5、0.7、1.0 mm)と咬合面削除量(0.5、1.0、1.5 mm)を組み合わせて9種類の支台歯を準備した。支台歯模型を歯科用CAD/CAMシステムでスキャンし、それぞれの種類の支台歯の複製をコンポジットレジンブロック(Lava Ultimate、3M ESPE)から削り出した。次に各種支台歯の複製模型をスキャンし、外形は同じになるようにクラウンをデザインしジルコニア仮焼体(Lava Plus Zirconia、3M ESPE)から削り出し、焼成した。焼成後、クランを研磨し、マイクロCTを用いて軸面及び咬合面の厚みの精密な評価を行った。その後、クラウンを支台歯複製模型にレジンんセメントを用いて合着し、直径10mmの半円球状の圧子を用いて咬合面に対して垂直方向に静的荷重を加え、破折に至る荷重を調べた。最薄タイプのクラウンの破折荷重が5558±522 N、最厚タイプのクラウンの破折荷重が9764±380 Nであった。クラウンの厚み測定と破折試験の結果に対して重回帰分析を行ったところ、クラウンの軸面の厚みは強度に対して有意な影響を及ぼさないが、咬合面の厚みは有意な影響を及ぼすことが分かった。回帰直線の計算に基づくと、咬合面の厚みを1 mm増加させることで破折強度が3465 N増加することが分かった。これらの実験結果は、オール・ジルコニアクラウンの厚みが軸面及び咬合面で最低0.5 mm確保されれば臼歯部でのクラウンとして十分機能することを示すものである。したがって、歯質削除量が少なく、健全歯質を保存できる補綴方法として応用可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、H25年度は支台歯模型の作製方法、クラウンの作成方法、クラウン厚みの測定方法といった実験系を確立することができ、それに基づいてクラウンの厚みが強度に及ぼす影響の評価まで終了することができた。さらに、H26年度に実施を予定していた繰り返し荷重による影響を現在実施中であり、計画以上に進展していると判断している。また、ジルコニアクラウンに加えて、CAD/CAMで製作した硬質レジンクラウン(Lava Ultimate, 3M ESPE)の強度試験も実施新しい知見を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ計画よりも研究が進展しているのでこのペースで継続していく。具体的には繰り返し荷重がオール・ジルコニアクラウンの強度に及ぼす影響の評価を行う。さらに、H25年度に実施した研究および予備試験を通してジルコニアの低温劣化による結晶相変態(単斜晶→正方晶)がクラウン強度に及ぼす影響をより詳細に検討することとした。これらの実験を通してオール・ジルコニアクラウンの強度に関する基礎的知見を幅広く得られるものと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初はH25年度中に論文投稿を行う予定であったが、論文作成に時間がかかったため投稿費や英文校正費用をH26年度に繰り越すこととした。 論文原稿はほぼ完成しており、H26年4月中には投稿する予定である。本投稿にかかる費用として繰越額から支出する計画である。またH26年度分として請求した研究費は当初の計画に基づいて研究実施のための物品・消耗品購入、研究成果発表に関わる旅費などに使用する。
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