研究課題/領域番号 |
25462982
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
羽鳥 弘毅 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40372320)
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研究分担者 |
西條 芳文 東北大学, 医工学研究科, 教授 (00292277)
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30178644)
萩原 嘉廣 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90436139)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光音響顕微鏡 / 光音響効果 / 硬組織イメージング / 顎関節症 / 下顎頭 / 下顎頭軟骨 / 軟骨下骨 / ラット |
研究概要 |
歯科臨床において,かみ合わせの不調和などに起因する顎関節症に遭遇するが,顎関節症においても関節軟骨ならびに軟骨下骨の病理的形態変化が生ずると考えられる。そこで本研究では,光音響顕微鏡が顎関節症の診査・診断に応用可能であるかを評価するために,動物を用いてパイロット実験を行った。 本実験には生後20週齢Wistar系雄性ラット5匹を用いた。ラットの安楽死後,下顎骨を摘出し浸漬固定を行った。摘出された下顎骨より両側の下顎頭を切除して,光音響顕微鏡の撮像に供した。 顕微鏡撮影は,マイクロチップレーザ(出力283 μJ, 波長532 nm, パルス幅 1 ns)で光音響信号を励起し、中心周波数20 MHzの凹面超音波振動子で超音波信号の受信を行った。レーザと超音波振動子は同軸で計測を行い、1.8 mm×1.5 mmのBモード画像を120 μm間隔で25枚取得し、3次元画像構築を行った。本実験で使用された波長532 nmのレーザ光は緑色であり、被験対象物内の赤色領域において強い光音響信号の応答が得られることが知られている。 光音響顕微鏡により,軟骨下骨下層から海綿骨に至るまでの領域を可視化することに成功した。同時に、海綿骨内の赤色領域である赤血球成分の分布も可視化された。また超音波顕微鏡により,軟骨表層から軟骨下骨に至るまでの領域を可視化することに成功した。両顕微鏡増を重ね合わせることにより,軟骨表層から軟骨下骨を経て海綿骨に至るまでの3次元画像情報を詳細に描写することを可能とした。 以上より,光音響顕微鏡は顎関節症においても下顎頭の形態変化を正確に診査・診断するための新たな硬組織イメージング装置となり得ることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究目的は「光音響イメージング装置の撮像条件最適化」とし、「1.ex vivoでの光音響イメージング撮像」の画像解像度および深部撮像能を指標に「2.レーザ光出力特性の最適化」および「3.高精度超音波振動子の改良」の観点から研究を行った。 「1.ex vivoでの光音響イメージング撮像」では、生後20週齢Wistar系雄性ラットの下顎頭を対象として光超音波顕微鏡撮影を行い、その最適条件を決定した。 「2.レーザ光出力特性の最適化」においては、マイクロチップレーザの「出力」を200~300μ、「波長」を500~1100 nmまた「パルス幅」を0.5~5 nsの範囲内で変化させることにより光音響イメージングの画像解像度と深部撮像能の最適化を図った。その結果、「出力」は283 μJ、波長532 nm、パルス幅 1 nsが最適条件と判明した。 「3.高精度超音波振動子の改良」では、凹面超音波振動子の「中心周波数」を10~50 MHzの範囲内で光音響イメージングの画像解像度と深部撮像能の最適化を図った。その結果、「中心周波数」は20 MHzが最適条件と判明した。これらの最適条件下でのラット下顎頭の撮影においては、下顎頭軟骨・軟骨下骨・海綿骨を詳細に描出した。さらに海綿骨内の赤血球の分布も描出された。本システムは骨組織、軟骨組織および組織内赤血球分布を可視化する有用な装置であることが支持された。 以上より、交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は引き続き正常ラットを使用することによりex vivoでの光音響イメージング撮像について様々な観点から検討を加える予定である。 「1.光音響イメージング撮像」では、生後16週齢Wistar系ラット各週齢につき雄雌各5匹ずつ)計30匹を用いる。これら動物から被験組織として、上下顎骨(含 歯槽骨)、顎関節、椎骨、肩関節、大腿骨、股関節、脛骨、膝関節を摘出し各被験組織に対して光音 響イメージングをex vivoにて撮像する. 「2.光音響イメージング像とX線CT画像ならびに組織像との比較」では、被験動物および被験組織については上述の実験1と同様である.「1)X線マイクロCT画像との比較」、撮影には本学既設の実験小動物用X線マイクロCT器材を用いる.吸入麻酔薬により被験動物に対して全身麻酔を施す.各被験組織に対してX線マイクロCT画像を撮影する.得られたX線マイクロCT画像と実験Iでの光音響イメージング像とを比較し,光音響イメージング装置の形態的画像診断装置としての可能性について検討を加える.「2)組織像との比較」、被験動物の安楽死後,被験組織を摘出しホルマリン固定する.脱灰後パラフィンブロックを作製し薄切を行う.ヘマトキシリン・エオジン染色およびI・II型コラーゲン,アグリカンの免疫染色を行う.得られた染色像から,光音響イメージング装置の組織為害作用について検討を加える.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由として、「人件費・謝金」の不使用が考えられる。今後は研究人員の増加により、効率よく本研究課題の遂行に邁進する所存です。その具体的な方法として、人員を増やすことにより動物実験と画像撮影(含 評価)を同時進行で進めることを想定している。 動物実験には常に1名の大学院生を同行させる。また画像撮影および評価にも1名の大学院生を同行させる。さらに画像評価には専用ソフトが必要であるため、画像構成用専用ソフトの購入も物品費に計上する予定である。これらにより、実験のさらなるスピードアップにつながるものと計画している。
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