ナノ・アパタイト粒子をBMP配合/架橋型ヒアルロン酸ハイドロゲルに混和した複合体を調製した.同生体材料をマウス頭蓋部皮下,大腿部筋肉および背部皮下に注入し,組織反応(骨形成)を評価し,外科的侵襲の少ない注入型(ゾルーゲル反応式)硬組織伝導デバイスの開発を試みた. ゲルにはヒアルロン酸ベースハイドロゲル(Hystem)を用い,脱ガス水に溶解した.ナノサイズのアパタイト粉末には(40 nm径品)(n-HAP)を用いた.BMPは1ml中に8μgとした. n-HAPはゲルに事前に配合し,BMPも予め脱ガス水に溶解した.試験材は,Hystem・n-HAP・BMPで,対象材はHystem・n-HAPおよびHystem・BMPであった.ゾルはマウス頭蓋部皮下,大腿部筋肉内および背部皮下の3箇所に22Gの注射筒を用い1から2.5mlの分量にて注入し,生体内でゲル化(約20分)させた.注入後1週,4週,8週に渡りμCTにて不透過像の経過を観察した.8週経過時には、残存材料を含む生体組織を摘出し通法に従い組織像の観察を行なった. Hystem・n-HAP・BMP複合体は,マウス頭蓋骨皮下,大腿部筋肉内および背部皮下において(約35%確率),経時的にμCT像上での不透過度を増加させる事を確認した. HE組織像から,複合体材料が生体内で一部吸収され,軟組織を主体とする硬組織前駆状態であった.一方,Hystem・n-HAPおよびHystem・BMPの対照材注入部では、μCT上での不透過像はほとんど得られなかった. 試験材ではBMPはn-HAPに保持,徐放され長期骨形成能が維持されうると考えられた.また,注入部位での創傷治癒に伴う血管新生が顕著な場合に骨形成が有意と考えられた.今後の本研究が発展し,臨床応用に繋がることが期待された.
|