研究課題/領域番号 |
25463018
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
横山 薫 (平野 薫) 昭和大学, 歯学部, 講師 (00384355)
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研究分担者 |
高橋 浩二 昭和大学, 歯学部, 教授 (40197140)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 下顎癌術後 / 下顎偏位 / 区域切除 / 摂食機能 / 嚥下 / 下顎復位装置 / CT画像 |
研究概要 |
【目的】下顎癌術後患者は、創部の瘢痕化や放射線治療による組織の繊維化が進むにつれ下顎骨は徐々に内側へ偏位し、著しい場合では全く上下の咬合が得られないまでに至ることもある。これらの症状に対し、われわれは下顎の連続性が失われた症例で閉塞性睡眠時無呼吸症候群に用いる口腔内装置を応用した下顎復位装置を適用し、摂食の向上が得られたことを報告した。今回、われわれは下顎の経時的な偏位をCT画像を用いて定量的に評価し、下顎復位装置の効果について検討した。 【方法】当科を受診した下顎癌術後患者のうち、下顎の連続性が失われ下顎偏位が起きた症例に対し下顎復位装置を適用したものを対象とした。下顎偏位の評価には、装置装着前後のCT画像を用いた。FH平面(F-H plane)とS、N、ANSを結んだ平面(S-N-ANS plane)を基準平面とし、Me、オトガイ棘、筋突起再上端を結んだ平面(Me-spine-processus plane)とのなす角度の変化を分析した。また、摂食機能の評価には藤島の嚥下障害グレードを用い経時的な摂食状態を評価した。 【結果】装置の使用によりF-H planeに対するMe-spine-processus planeの角度は63.35°から62.01°に、S-N-ANS planeに対するMe-spine-processus planeの角度は31.04°から27.26°へ変化した。また、摂食機能に関しては、入院時の五分粥3回フラッシュ、ソフト食(グレード7)から術後1年では常食(グレード10)を摂食できるようになった。 【考察】結果より下顎復位装置は下顎偏位、摂食機能向上に有効であると示唆され、観血的処置を行うことなく審美、機能の改善が認められた。今後、長期的な経過観察により摂食以外の機能の評価及びより詳細な下顎偏位を計測するためにさらに精度の高い解析方法の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
癌の治療のために撮影されたCT画像を用いて下顎の偏位の継時的変化を測定するには、撮影日の異なるCT画像を3次元的に正確に重ね合わせる必要がある。しかし、当大学に現存するソフトウェアでは対応できず、それが可能なソフトウェアを新規購入し、計測方法の検討が必要となったため。
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今後の研究の推進方策 |
【方針】H25年度に構築したCT画像解析システムを用いて、症例数を増やしていく予定である。 【課題】多施設で癌の治療を受けた患者のCT画像の入手に当たり、担当医の許可のみではCT画像・手術記録が入手できない例が生じている。 【対応策】当該施設の倫理委員会に許可を求めるが、許可されるまでに時間を要しているのが現状である。
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次年度の研究費の使用計画 |
3次元CT画像解析方法の検討と解析ソフトウェアの購入に時間を要し、内視鏡記録システムの構築が次年度に持ち越すこととなったため。 H26年度に内視鏡記録システムを完成させる。 また、同意の得られた患者を対象として、下顎癌術後で下顎の偏位が認められる症例に対し下顎復位装置を作製し、装置の効果を継時的に測定する。測定項目は、CT画像を用いた形態計測および口腔機能検査(嚥下造影検査または嚥下内視鏡検査、咀嚼機能検査、構音機能検査、呼吸機能検査)である。
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