研究課題/領域番号 |
25463019
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
片岡 有 昭和大学, 歯学部, 助教 (90527300)
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研究分担者 |
柴田 陽 昭和大学, 歯学部, 助教 (30327936)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エキシマランプ / 紫外線 / チタン / 酸化膜 |
研究実績の概要 |
一般的に紫外線領域の光を照射する装置としては、水銀を用いた蛍光灯を用いるものが多く、現在でも医療界において広く使われている。しかし、「水銀に関する水俣条約」で、水銀および水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制する国際条約が2013年10月に採択・書名され、2016年に施行される予定である。したがって、医療界においても現在使用されている水銀を用いた製品は大きく使用が制限されることが予想できる。今回、我々が共同研究で提案しているエキシマUVランプ装置は、一切の水銀を用いずに、希ガスに電圧を負荷することで発生する光束から特定波長を導引するものであり、波長が選択できることが特徴であり、また、短い波長領域により光エネルギーは強いものである。 歯科医療分野においては、特にインプラント治療に携わる多くの臨床家がチタン表面洗浄改質技術に注目しているにもかかわらず、光による材料学的機序の解明に至っていない。示されているメカニズムはチタン酸化膜に特有の光触媒効果ではなく、一般的なUVランプの洗浄効果のみである。 本研究費にてにおいて、UVランプによるチタン表面での改質機序および効果を解明するために、波長が限局された低圧水銀UVランプと波長の異なるエキシマ領域のUVランプを用いて比較した。その結果、細胞培養後のReal-time PCR法では5日後および7日後の酸化ストレスの発現に差はなかった。現在、チタン上で培養した細胞が賛成する硬組織の物性をナノインデンテーション法などを用い検討続けている。その結果、遺伝子発現に差がないのにもかかわらず、厚いアモルファスの酸化膜を獲得している表面では、硬組織の硬さが高いことが明らかになった。これは、エキシマランプの波長が酸化膜に及ぼす光触媒作用によるものとも考えられるが、今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って研究は進んでいる。細胞培養、遺伝子解析および微小領域の力学的性質の解析など新たに導入した機器を用いて分析を進めている。しかしながら、チタン板表面での分子化学的な解析が、明確な結果を得るに至っていない。実験試料を増やし、分析を進めている段階である。 理由としては、チタン表面での分子化学的な分析は、ラマン分光法、XPSおよびナノインデンテーションで行っているが、未だどの文献を検索しても明確な考察がされていないのが現状である。その中で、実験系を確立するのに追加実験が必要になっているためである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに進めていく予定である。現在まででin vitroの実験系は進めてきたので今後はin vivoの実験系での展開を考えている。
【平成27年度】 ラット(またはウサギ)を用いて、大腿骨にエキシマ処理したインプラント体を埋入し、経時的にマイクロCTで経過を追っていく。また、in vivoで行った実験系に再現性があるのかを確認する為に、チャンバーを用いてできた硬組織からの遺伝子解析や、微小領域での力学的特性も試験し、結果を考察する予定である。 また、学会発表で広く知見を深めると共に、追加実験を行う。一連の成果が確立された時点で研究結果は可及的に早くに論文にし、公表するように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度購入した物品での研究が主であったためである。それらの試料や薬品を用いてのin vitroでの研究を進めていて、大学に設置してある設備および機器での分析が主な研究であったためである。細胞培養は教室内でも常に行っていることであり、特別な予算を必要としなかったことが考えられる。遺伝子解析などは他教室にも協力を求め進めていた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は、新たな分析機器を使用し、それに応じた試料作製が求めれらるので相当の支出が見込まれる。まず、細胞実験においての遺伝子解析においては、細胞内のシグナル伝達などを解析する為に、新たな試薬が必要になる。動物実験においては、ラット(またはウサギ)を購入し、飼育する為に相応の支出がある。解析の段階にあっては、現在までは大学設置の機器で対応できた部分もあるが、知見を確立するためには今後は外注分析も含め新たな結果が必要になると思われる。また、動物実験においては動物用インプラントの作製や表面処理も新たに設計開発する必要があると思われる。研究成果を発表するための学会発表を厳選し、論文作成およびデータ検証に予算を傾ける予定である。
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