前年度までに、金属の切削、金属試料の作製、金属試料の前処理、エネルギー分散型分析装置(EDX)による金属成分の分析定性・定量するという一連のプロセスを確立することができた。今回、確立した採取方法ならびに測定方法を基本として,平成27年度の研究実施計画では、臨床応用を考えて,臨床で簡便に応用できる条件を想定し、確立した条件で試料採取、分析を行い、その結果の有用性を検討し,知見得ることであった。 金属の切削には、臨床で一般的に使用されることが多いシリコンポイント、ホワイトポイントおよび耐水研磨紙を選択した.まず,既知の鍛造金属を使用し,各切削器具を用いて分析用金属試料を作製、切削器具に付着した金属試料の前処理、エネルギー分散型分析装置(EDX)による金属成分の分析定性・定量を行い、得られた結果を検討した。また、同じ条件で、切削に使用した金属試料を、臨床では鋳造またはCAD/CAMで製作されて装着されることを考慮し、鋳造と鍛造試料を切削し、切削試料に付着した切削粉の金属成分分析を行い、得られた結果を比較・検討した。 以上の結果から,金属分析に,歯科診療で用いられる研磨紙,シリコンポイント,ホワイトポイントが使用できることが明らかになった.また,切削条件も,一般診療で推奨される回転数と切削圧を使用できることが確認でき,さらに約10秒の切削で,成分分析に十分量の金属試料ができることも明らかにできた.しかしながら,修復に使用されている金属により,最適な切削条件が異なることから,試料を採取する際には,切削機器,切削速度,切削圧などを確認しながら,最適な条件で行うことが必要であることが示唆された.また,非破壊的試料採取のために,採取された金属試料が微量であっても,確実な伝導性を得るためにコーティングすることで,検出感度を向上させ,精度の高い分析結果が得られることも重要であると示唆された.
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