骨再生医療が著しく発展した今も、顔貌に大きな影響を及ぼす広域顎骨欠損のオーダーメイド治療は確立されていない。申請者は口腔粘膜組織から独自にiPS細胞を樹立した。本申請は、そのiPS細胞から誘導した間葉系前駆細胞を用いて、顎口腔組織欠損再生治療を可能とする新規技術創生の基盤を築く事を目的とした。 エピソーマルベクターを用いて初期化因子であるOCT3/4、SOX2、KLF4、L-MYC、LIN28、p53-shRNAをエレクトロポレーション法にて口腔粘膜由来線維芽細胞に導入した。さらに、上記初期化因子にGlis1を加えてiPS細胞の樹立も 行い、初期化に要する時間が短くなることを明らかにした。 マトリゲル上でiPS細胞をフィーダーフリー条件下で培養し iPSMPCへの誘導を行った。 フィーダーフリー条件下でソーティングを行わないiPSMPC誘導法が可能となった。iPSMPCの継代を重ねた後、染色体解析であるG-band法およびM-FISH法にて正常であった。iPSMPCを骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞へと分化誘導し、qRT-PCR、Flow Cytometryならびに特殊染色法によって多分化能を確認できた。骨芽細胞への分化については培地へのBMP-2の添加の有無によって骨分化マーカーの遺伝子、タンパク質発現に差のあることが明らかとなった。現在、足場材料とともに細胞を免疫不全マウスに移植し評価を行っている。
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