研究課題/領域番号 |
25463047
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
赤坂 司 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00360917)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノパターン / 微細構造 / 細胞応答 / コラーゲン / 歯根膜線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
将来目標は、歯肉のズレ落ちを治療するための歯周組織再生を簡単に行える人工歯根膜シートの開発である。本研究課題では、ナノインプリント法を利用しコラーゲンやアパタイトでマイクロ・ナノ構造を持つ歯周粗組織再生用シートを作製し、各パターンとの細胞応答性を検討することを目的とした。 本年度は、前年度までに作製できている試作パターン化コラーゲンの欠点を改良することとした。また、新しい微細加工法としてレーザー描画を導入し、より複雑なパターンの作製を検討することとした。検討項目として、コラーゲンパターン化の際の架橋剤の種類、濃度、時間、反応法、添加物の種類の検討を主に計画した。レーザー描画では、レーザー強度、速度、パターン形状の種類等の検討をした。さらに、作製したパターンを用いてヒト歯根膜線維芽細胞の集合状態の制御を検討した。 パターン化コラーゲンの強化検討の結果、天然物由来の架橋剤を用いたところ、室温においても架橋剤の濃度を濃く、反応時間を延長することにより、コラーゲンの強度は上昇することが分かった。また、気泡の発生の回避や均一な反応のためには、適切な温度コントロールが重要であった。これにより、まだ強度は十分でないが細胞接着試験には耐えうるパターン化コラーゲンを得ることができた。一方でプロテオグリカンの添加は、膨潤の防止に有効であった。今後、さらなる強化が必要である。 また、レーザー描画によるパターン化条件の検討では、描画線の幅やピッチを変化させ、細胞の応答を観察した結果、細胞の十分な応答を得るためには、3μm程度の線幅でより狭いピッチの方が有利であるこが判明した。さらに現在機構は不明であるが、パターンの形状を変化させることにより、培養細胞の局所的な濃度をコントロールできることが分かった。今後、細胞濃度が上昇する機構を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初困難であると予想されたコラーゲンのパターン化が、本年度の架橋剤の検討により、ある程度期待できる強さにすることができた。このことは、3次元構造等のより高度なパターン化の際に有利に働くと考えられ、大いに進展したものと考えられる。 また、パターンにより細胞の局所的濃度をコントロールできることの発見は、3次元化につながる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
長期培養に耐えられる強度を得るためのパターン化コラーゲンの強化法の検討を進める。さらに得られた条件を用いて、3次元組織化を導くより複雑なコラーゲンのパターン化を検討する。その際、歯肉細胞、歯根膜細胞、骨芽細胞、間葉系幹細胞などを用いて異なった細胞に対する影響を検討する。全体的には、パターン化と細胞培養を繰り返し、歯周組織の3次元化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画はほぼ順調に進行したものの、端数が生じたため、次年度使用額とし、研究費の有効利用を心掛けた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分の1473円は、次年度の消耗品購入費に追加し、有効に活用したい。
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