研究課題/領域番号 |
25463047
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
赤坂 司 北海道大学, 歯学研究科, 准教授 (00360917)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノパターン / 微細構造 / コラーゲン / 歯根膜線維芽細胞 / 歯科材料 / パターニング / 歯根膜再生 |
研究実績の概要 |
将来目標は、歯肉のズレ落ちを治療するための歯周組織再生を簡単に行える人工歯根膜シートの開発である。そこで本研究課題の段階では、ナノインプリント法を利用しコラーゲンやアパタイトなどでマイクロ・ナノ構造を持つ歯周粗組織再生用シートを作製し、各パターンとの細胞応答性を検討した。 本年度は、前年度までに作製検討しているコラーゲンによるパターン作製の再現性が低いため、①マイクロ・ナノパターン化コラーゲン作製法のさらなる改良とその細胞培養評価を検討した。検討項目としては、天然架橋剤の濃度およびエタノールへの溶解法、ゼラチンの種類や混合時の温度、抗菌剤添加の有無、モールドの滅菌法、反応温度、反応時間を検討した。その結果、反応温度、抗菌剤、滅菌法の選択により、安定したパターンの生産が可能となった。また、架橋剤の濃度によりパターン化コラーゲンの生分解性のコントロールが可能であることが分かった。以上の安定なパターン化コラーゲンの作製の達成は、歯および歯周組織と類似組成にて「歯の表面に貼るためにシート」の作製が可能となったことを示している。よって生体を疑似した高機能性材料につながるものと考えられる。 次に、前年度までに作製に成功したアパタイトパターンの作製は時間がかかる欠点があり、さらなる応用を考慮し、②硬化可能な歯科材料によるマイクロ・ナノパターニングと歯表面でのパターンングを検討した。その結果、モールド側の材料の選択により、多くの歯科材料で、500nmレベルでのパターニングが可能であることが分かった。プラスチックモールドでは高分子系パターンニングに向いており、シリコーンゴムモールドではセメント系パターニングに向いていることが分かった。特に、フロアブルコンポジットレジンは、曲面を持つ歯の表面のパターニングに向いており、1分以内と簡便な操作性であった。これにより臨床応用での可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
パターン化コラーゲンの作製にて、安定した作製法が見つかったことは大きい。そのために、今後、本コラーゲンのパターニング法を用いることにより、様々なサイズや形状でのパターニングが容易になるものと考えられる。また、現在、臨床で使用されている歯科材料でのパターニング法の発見は、口腔内で使用できる安全性が高い材料でのパターニングが可能ということに繋がり、歯科治療法への応用の近道となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本課題によって、治療に利用できるパターニングの基本技術は確立できたものと考えます。今後は、歯科臨床の研究者との共同研究を組み、より臨床的な立場より研究を遂行していきたい。そのための主な検討項目は以下となる。 ・パターンにより細胞機能は制御できる。そのためのパターンの種類や組み合わせ候補は膨大な数となるため、スクリーニングに使用する微細パターンやマクロパターンの作製 ・実際の治療法を想定したパターニングへの改良 ・パターンの効果を予想するため、十分な基礎と、動物実験または代替実験による効果の確認
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次年度使用額が生じた理由 |
当課題に関してすでに数報の論文を出版しており、また研究自体はほぼ終了している。しかしながら、成果をまとめた最後の論文の作成が少し遅れたため、費用が必要となる論文の出版および学会による成果発表が年度内にできなくなってしまった。また、代替となる研究費も、現在のところ目途が立っていない状況である。そのため、補助事業期間を延長し、次年度への使用額を繰り越し、本課題成果を十分に発表したい。
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次年度使用額の使用計画 |
成果を発表するための旅費、論文掲載料、ポスター印刷消耗品、機器使用料に使用予定。
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