アパタイトセメントに粘着性を付与することで、体液で湿潤状態にある生体骨に対しても粘着する粘着性アパタイトセメントの創製を目指して研究を行った。粘着性因子としてアテロコラーゲンを選択し、これをアパタイトセメントに導入する試みを行った。 セメントの粉末部として、リン酸4カルシウムとリン酸水素カルシウムを1:1で混合したものを作製した。セメントの液剤部として、リン酸水素2ナトリウム溶液に、アテロコラーゲンを添加したものを作製した。粉末と液剤を練和して硬化させ、ガラス板で挟んだ。万能試験機を用いて、ガラス板が剥離するのに必要な力を測定し、セメントの接着強度を算出した。また、アテロコラーゲン濃度、粉末と液剤の比率などを変動因子とし、実際の臨床現場において使用可能な接着強度を持った粘着性アパタイトセメントの創製を目指した。 アテロコラーゲン濃度を増大させることにより、セメントの接着強度は増加する傾向を認めた。しかし、添加できる最大濃度においても、十分な接着強度は得られなかった。また、分子量や、酸解離定数などの異なるアテロコラーゲンを使用したが、接着強度に明瞭な差は現れなかった。
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