現在,歯の喪失後のデンタルインプラント治療による咬合機能の回復が一般に広く普及している。最近になり,チタンインプラント表面のエイジングによりオッセオインテグレーションの獲得が十分に得られないことが証明されるとともに,チタンインプラント表面の新たな処理法として,紫外線照射による光機能化技術が世界的に広まりつつある。しかし,光機能化するためには専用の機器を用意する必要があること,ならびに紫外線照射時に生じる毒性の高いオゾンの発生が問題点である。我々の研究室では,骨再生療法のために新規に開発・合成したバイオカップリング剤を用いて,骨再生の足場となるスキャホールド表面の細胞接着性を向上させ,骨の形成作用を促す技術を開発してきた。本研究では,この技術を応用して,インプラント表面に適応することを目的とし,インプラント表面をバイオカップリング剤で改質処理することにより,インプラント表面の骨芽細胞親和性を高め,オッセオインテグレーションを確実に獲得しようとするものである。 本事業の最終年度は,チタン表面へのバイオカップリング剤の短期の処理効果を確認できているため,これらをもとに研究に必要なバイオカップリング剤の合成とチタン表面への細胞の付着性の確認を行った。in vitroによる改質したチタンディスク表面への細胞接着実験では,未処理群と処理群による細胞接着性の差がみられなかった。このことよりバイオカップリングの細胞に対する毒性はないものの,チタン表面への細胞接着性の向上には寄与しないことが示唆された。同様にガラス面へバイオカップリング剤を処理した場合の接着性は向上することから,チタン表面への処理効果が弱いことが原因であることが示唆された。
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