研究課題
歯周病による歯槽骨の吸収や欠損は、矯正治療法の選択肢を減少させ、治療期間や治療効果を大きく左右する要因となっている。また重度の歯周病は、治療の断念を促す事に繋がっている。歯周病を持つ患者に対して、「簡易的に利用できつつも有効なJ薬物徐放足場の開発が、臨床の場で必要とされていた。これまでもリン酸カルシウムや他の足場材料など優れた足場材料が開発され、それらと様々な薬物(成長因子など)を複合化した複合体の開発が成されてきた。しかし、薬剤の単純な担体塗布は、埋入後すぐにパース卜放出をおこし、局所領域に最適な薬剤濃度を担保出来ない事が知られており、薬剤lを担体表面に留め、徐放効果を可能とする新たな工夫が必要であった。これらの背景を踏まえ、申請者等はα リン酸三カルシウム( α-TCP)多孔質体表面に成長因子と結合能が高いへパリンを化学的に結合させた薬物徐放担体を独自に作製し、同新規担体の骨再生能を評価する申請を行った。昨年度は同試料をラット頭蓋冠骨欠損に埋入し、骨形成能を評価した。マイクロCTを用いたX線学的評価ならびにへマトキシリンエオジン染色による、病理組織学的評価から表面へパリン化作業により骨形成能が促進されることが確認できた。また、イヌの下顎骨骨欠損モデル移植術を行った。実験群にはα-TCP/ヘパリン/FGF-2複合体、対照群にはα-TCP、α-TCP/ヘパリン複合体を骨窩洞に填入し、安楽死後、骨窩洞をマイクロCTで撮影し骨のパラメーター解析を行った。その結果。骨密度は3群で優位差は認められなかったが、骨体積率では埋入4週後で、α-TCP/ヘパリン/FGF-2複合体が3群中で最も高い値を示し、骨塩量では埋入8週後で最も高い値を示した。すなわち、α-TCP/ヘパリン/FGF-2複合体が骨再生に有効であることを明らかにした。
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