研究課題
本研究は、新しく開発した極薄HApシートに象牙質固着促進機能と耐酸性機能を付与した、機能複合フッ素化アパタイト(FHAp)シートを開発するとともに、このシートを象牙質上へ「速く・強く」固着する技術を確立することにある。平成25年度では、FHApシート作製と評価に重点を置いた研究を実施し、ターゲット材料の選定およびFHAp薄膜の成膜条件の確立、さらにFHApシートの結晶性制御法を確立した。薄膜のシート化には有機溶媒溶解性のレジストを使用することにより、これまでの100倍の単離時間の短縮化に成功し、量産化に向けての指針を示すことができた。平成26年度は、固着メカニズムの解明と固着方法の確立を目標とした研究を実施した。FHApシートに代わり、非晶質のリン酸カルシウム(ACP)シートを用い、貼付液と貼付法の検討を行った結果、貼付液のpHや、再石灰化法の手順を確立し、1日以内でのシートと歯質の一体化に成功した。また、シートの歯質に対する固着強度は、引っ張り試験法により2.5 MPa以上であることを確認した。さらに、象牙細透過抑制率の測定を行い、市販のレジン材より高い値を得ることができ、本手法の知覚過敏治療への有用性を明らかにすることができた。H27年度は、FHApシートの耐酸性についての評価を実施した。溶出試験液に0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液を使用し、薄膜からのCaイオンの溶出量を誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法により測定した。その結果、FHAp薄膜はHAp薄膜に比べて約5倍の高い耐酸性を持つことがわかった。また、FHApシートをヒト抜去歯上に貼付し、超音波洗浄試験により固着強度を評価した結果、低結晶化FHAp/TCP複合シートにおいて、貼付6時間後の超音波洗浄試験に耐えるような強い固着力を持つことがわかり、FHApシートの歯科治療分野での有用性が明らかとなった。
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