研究課題/領域番号 |
25463068
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
須佐 岳人 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (10622558)
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研究分担者 |
横尾 聡 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00322206)
松崎 利行 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30334113)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アクアポリン5 / 唾液腺 / ピロカルピン / イソプロテレノール |
研究概要 |
本研究の目的は、唾液腺の細胞膜水チャネルであるアクアポリン5の調節機構を明らかにし、放射線性口腔乾燥症の治療への応用を目指すものである。25年度は当初の研究計画に基づき、各種唾液腺刺激薬の反復投与がアクアポリン5の発現量に及ぼす影響を検討した。ウィスター系ラットを用いて、まずは唾液の水成分の分泌を促すムスカリン受容体刺激薬として、臨床でもよく用いられるピロカルピンを1日2回、7日間連続投与し、耳下腺と顎下腺を用いたアクアポリン5の免疫染色とイムノブロットをおこなった。結果は意外にもピロカルピンの7日間投与によりアクアポリン5の発現量の低下を示した。このことから口腔乾燥症の治療として用いるピロカルピンの効能はアクアポリン5の発現量の上昇によるものではないことが示唆された。一方で、腺房細胞からの顆粒放出による唾液のタンパク質成分の分泌を促す作用のある、アドレナリン受容体刺激薬であるイソプロテレノールについても同様に検討をおこなった。イソプロテレノールにはアクアポリン5の発現量を大きく上昇させる作用があることが判明した。この結果から、顆粒放出の頻度がアクアポリン5の発現量と関係あるのではないかと考え、顆粒放出を低下させる目的で3日間の絶食をおこないアクアポリン5の発現を検討したところ、絶食でアクアポリン5の発現が減少することが判明した。これらの結果から、臨床の現場で、放射線照射前にピロカルピンを投与すると唾液分泌障害を軽減することができるが、その機序としてはアクアポリン5以外の因子についても注目する必要があることが示唆され、26年度以降の研究を遂行するうえでの重要な情報を得ることができた。これらの研究成果は学会発表をおこなうとともに、雑誌論文として発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、薬剤が唾液腺のアクアポリン5の発現量に及ぼす影響を検討し、ピロカルピンとイソプロテレノールの影響を知ることができた。当初の計画では定量的リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現の変化も解析する予定であったが、解析は免疫染色とイムノブロットにとどまった。しかし、学会ならびに学術雑誌で成果を発表することもでき当初の計画内容をおおむね達成するものである。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の結果から、臨床で口腔乾燥症の治療に用いられるピロカルピンはアクアポリン5の発現量を増加させないことが判明した。本研究の当初の仮説として、放射線照射時のピロカルピンの前投与はアクアポリン5の発現ならびに細胞内分布を保つことで唾液分泌障害を軽減すると考えた。しかし、ピロカルピンの前投与の効果として、アクアポリン5以外の因子にも注目すべきであることが示唆された。今後は当初の予定通り、ラットに放射線を照射しで唾液腺の変化を解析するが、アクアポリン5以外の因子にも注目して解析を進める。ピロカルピンの前投与の有無による、組織変化の違いや、唾液腺での種々の機能分子の遺伝子発現の変化をマイクロアレイやリアルタイムPCRで検討し、ピロカルピンの効能を分子レベルで解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度にリアルタイムPCRを実施しなかったため、相当する試薬分が次年度使用額として生じた。 26年度新たに計画したマイクロアレイやリアルタイムPCRで使用する予定である。
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