研究実績の概要 |
Erdemらは3種類の口腔扁平上皮癌由来の細胞株(下歯肉、軟口蓋、舌)と正常鼻腔粘膜上皮細胞株との比較において、MMP(1,2,3,9)やカテプシン(B,L)などの発現が癌細胞で増強していることを免疫染色やフローサイトメトリーで示し、口腔癌細胞のマトリックスバリアー克服にMMP高発現が重要であることを指摘している (Erdem FN, et al. J Oral Maxillofac Surg 2007)。しかし、S1Pがこれらの発現を直接的に調節しているかについての報告はない。よってS1P濃度依存性にこれらの発現が誘導されるかmRNA、タンパク質レベルで発現を検討し、また、各阻害剤を用いた実験によってシグナル特異性に発現が変化するかについて検証する予定で現在遂行中である。ヒト口腔がん由来の細胞株を理化学研究所より入手したが、培養細胞を用いた実験で発現解析を進めている。関連因子についても、現在着目因子について検討を行っている。スフィンゴ脂質が細胞遊走に深く関与している可能から、脊椎動物の発生段階において脊髄の軸策伸展方向を制御する因子として軸索ガイダンス因子との作用に関心を持っている。軸索誘導以外に細胞移動、細胞接着、細胞極性や細胞骨格などの様々な現象を調節していることが明らかとなり、最近では癌との関係も注目されている。肺癌、乳癌、及び腎癌や、肺小細胞癌細胞株であるU2020などでも関連が示唆されており[Xian J, et al. Cancer Res. 2004, 64(18):6432-7.]、これらの検討も進行中である。培養下での発現については、形質が変わっている可能性があることから、実際のヒト検体についても検討を行いたいと考え、学内倫理委員会への申請を行い承認を得た。口腔がん患者の切除サンプルを採取し、現在検体数を蓄積している。
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