研究課題/領域番号 |
25463071
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西澤 悟 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00646200)
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研究分担者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30344451)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 再生骨 / ミニブタ / 顎骨欠損 |
研究概要 |
近交系ミニブタの新生児耳介片より単離した線維芽細胞にレトロウイルスベクターを用いて山中4因子を導入し、ES細胞様のコロニー形成能を有すミニブタiPS細胞株を樹立した。テロメラーゼ活性は線維芽細胞に比べて約1000倍の活性を有し、Nanog遺伝子の発現も増加した。細胞をSCIDマウスの皮下に移植すると腫瘍形成能を示した。染色体検査をおこなうと染色体数は38対であり、これはミニブタの染色体数と一致した。また検査を実施した50細胞中に染色体の異常はみられなかった。いっぽう導入遺伝子である山中4因子は40継代後も発現しており、ヒトiPS細胞で報告されている導入遺伝子のサイレンシングは確認できなかった。 次にこの細胞株を用いて再生骨の原料となる中胚葉への分化誘導培養法を検討した。ES細胞を胚様体形成させて分化誘導するとき胚様体のサイズやジオメトリーが分化効率に影響するという報告がある。そこで96穴低接着性培養皿に細胞数を何段階に条件をふって播種しサイズの異なる胚様体を形成させ、VEGF/BMP4/SCF/Activin A含有培地で中胚葉系細胞に分化誘導をおこなった。 分化誘導後の胚様体からRNAを回収し、初期中胚葉系細胞マーカーであるBrachyuryの遺伝子発現を測定すると検討した全ての群で発現増加が確認できたが、群間に有意差はみられなかった。また中胚葉細胞表面マーカーであるCD326(-)/CD56(+)細胞の割合をフローサイトメーターで測定すると全ての群でCD326(-)/CD56(+)細胞は増加したが、群間に有意差はみられなかった。分化誘導後も未分化マーカーであるNanog遺伝子発現が高発現を維持しており導入遺伝子のサイレンシングがみられないことが分化誘導を阻害しているのではないかと推察された。より良質な近交系ミニブタiPS細胞株の樹立する方法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
樹立したミニブタiPS細胞にヒトiPS細胞で報告されている中胚葉系細胞への分化誘導培養を実施したが初期中胚葉細胞マーカーであるBrachyuryの発現増加はみられたものの、Nanog遺伝子は高いレベルで発現を維持していた。また中胚葉細胞表面マーカーであるCD326(-)/CD56(+)細胞の割合も10%未満であった。樹立した細胞株はヒトiPS細胞で報告されている導入遺伝子(c-Myc, Klf4, Oct3/4, Sox2)のサイレンシングが生じておらず、導入遺伝子が高いレベルで発現を維持しており、初期化状態へ移行するバイアスが恒常的にかかっていることが原因でないかと推察している。
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今後の研究の推進方策 |
2013年にMBD3遺伝子がiPS細胞への初期化を阻害する主要な因子であり、MBD3遺伝子を抑制することでiPS細胞の樹立効率をほぼ100%に向上できることが報告された。ミニブタiPS細胞の樹立時にMBD3遺伝子をsiRNA等を用いて抑制することで現在よりも多数のiPS細胞株を樹立できることが可能となり、その中には良質なiPS細胞株が含まれると考えている。こうして得られた良質なiPS細胞株を用いて研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に変更が生じ、購入予定の試薬の種類や数量を変更したため。 物価の上昇により次年度の物品購入費が当初の予定より不足する可能性があり、その不足分に充足する予定である。
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