研究課題/領域番号 |
25463072
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
横山 三紀 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70191533)
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研究分担者 |
KA 井上 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90302877)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リソソーム / LAMP / 細胞内輸送 |
研究実績の概要 |
リソソームは加水分解酵素を含む細胞内小器官であり、エンドソーム、ファゴソーム、オートファゴソームと融合して、それらの小胞の内容物を分解する。リソソームは微小管レールをモータータンパク質により輸送され、核近傍(微小管のマイナス方向)または細胞膜近傍(微小管のプラス方向)に輸送される。正常細胞ではリソソームはマイナス方向に輸送されて核近傍に存在するが、癌細胞ではプラス方向に輸送されて細胞膜と融合し、加水分解酵素を細胞外に分泌する。この過程は癌の浸潤を亢進すると共に、癌細胞が骨に接して存在する場合には骨破壊も引き起こす。癌細胞による顎骨吸収は口腔領域において解決すべき重要な問題である。Lysosome-associated membrane protein 1/2 (LAMP-1/2)はリソソームの膜タンパク質の主要な成分である。LAMP-1/2を欠損したマウスは胎生致死となることからLAMP-1/2は生命維持に必須である。LAMP-2が欠損すると、ヒトではダノン病が発症し、マウスでは致死率の増加や体重低下がみられる。またLAMP-2欠損マウスでは歯周病が引き起こされる。LAMP-2の欠損によりリソソームはファゴソームやオートファゴソームと膜融合が抑制されるが、その原因としてLAMP-2はリソソームと微小管を連結する足場の形成を介してリソソームの細胞内輸送に関与することが示唆されている。本研究ではLAMPに着目することによりリソソームとモータータンパク質との連結装置の実体を明らかにすることを目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においてはLAMPに関連して以下の2点を明らかにした。①LAMP-1/2はリソソームのダイニン依存性のマイナス方向の細胞内輸送の輸送に関与する。平成26年度にマウス前骨芽細胞MC3T3-E1では、siRNAによるLAMP-1, LAMP-2の発現低下によりミトコンドリアが核近傍に集積することを報告した[Experimental Cell Research (2015) 331: 211-222]。この結果はミトコンドリアのダイニン依存性のマイナス方向の細胞内輸送にLAMPが関与する可能性を示唆するものである。しかしLAMP発現低下によるリソソームの局在の変化はみられなかった。そこで平成27年度においては、リソソームとダイニン・キネシンとの相互作用を実験的に強めた状況でLAMP発現低下をおこない、LAMPがダイニンに依存したリソソームの輸送に関与することを明らかにした(投稿準備中)。②LAMP-1/2の多量体化の解析をおこなった。当初の予定ではLAMP-1/2と相互作用する分子を免疫沈降で同定することによりモータータンパク質とリソソームの連結装置を明らかにする計画だったが、実際には免疫沈降で特異的な分子を見出すことができなかった。そこでLAMP-1/2を含む分子装置をより安定化する必要があると考えた。そのためにまずLAMP-1/2の多量体化の解析をおこなった。LAMP-1/2は相同なふたつのドメインがリンカーで結ばれた構造をしている。このふたつのドメインがLAMP-1/2の多量体化にどのような働きをもつかを生化学的に明らかにした(投稿準備中)。
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今後の研究の推進方策 |
LAMPのアセンブリをさらに解析、アセンブリを抑制する分子の設計をおこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進行の遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
抗体の購入予定。
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