研究課題/領域番号 |
25463073
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小野 由起子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 非常勤講師 (80345511)
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研究分担者 |
芳澤 享子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (60303137)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 凍結保存 / 歯 / 歯根膜 / 幹細胞 / 培養 / 細胞工学 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
歯の移植は有用な治療法であるが、健全な移植歯と移植床が同時に存在する必要があり、適応症が制限される。これまで凍結保存歯の移植を検討し、凍結保存歯の歯周組織が再生可能であることを明らかにしてきたが、ときに歯周組織再生の遅延や緩慢な置換性歯根吸収がみられることがある。本研究は凍結保存歯の歯根膜幹細胞を維持し、歯根膜細胞のアポトーシスを防ぐための凍結操作や保存液などの保存環境について検討し、歯根膜幹細胞の高い増殖活性能を長期間維持する凍結保存方法を確立することを目的としている。 (1)歯の凍結保存と歯根膜細胞の培養の継続 1)4週齢雄性ラットから上顎第一、第二臼歯を抜歯し、プログラムフリーザによる緩速凍結法、過冷却急速凍結法を用いて凍結し、-80℃のディープフリーザおよび液体窒素でそれぞれ凍結保存を開始した。培養細胞用凍結保存液による緩慢凍結法、ガラス化法急速凍結法によって前年度凍結した歯はそのまま凍結保存を継続した。2)実験群としてプログラムフリーザによる緩速凍結法、過冷却急速凍結法で凍結した1、3か月間凍結保存歯、培養細胞用凍結保存液による緩慢凍結法、ガラス化法急速凍結法で凍結した6、9、12か月間凍結保存歯、対照群として凍結していない歯の歯根膜をそれぞれ歯根上方1/3~1/4部から切離して培養した。実験には2回目の継代時に獲得した細胞を用いた。 (2)凍結保存歯の歯根膜細胞の増殖能の分析 (1)の2)で獲得した歯根膜細胞をTypeⅣコラーゲン処理した100mmディッシュに1000個/で播種し、細胞の染色を行い12日目のコロニー数と細胞数を計測した。連続継代培養を細胞増殖が止まるまで行い、細胞寿命(population doubling)を計測した。 凍結保存群の歯根膜細胞の増殖能は非凍結保存群と比較すると低下していたが、凍結保存群間においては有意な差はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プログラムフリーザによる緩速凍結法、過冷却急速凍結法による凍結保存を開始したが、凍結期間がまだ1、3か月と短く、長期の凍結保存はこれからである。したがって、凍結保存歯の歯根膜細胞の増殖能の分析はまだ途中である。TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出、歯根膜幹細胞の分布についての免疫組織化学的、酵素組織化学的検索を行うために順次標本を作製しているが、検索は途中である。また一時歯根膜細胞がこれまで通り育たなくなり、対照群の非凍結保存歯の歯根膜細胞の増殖能も低下した。
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今後の研究の推進方策 |
まず非凍結保存歯の歯根膜細胞で培養条件を再度確認し、以前と同等に細胞が増殖する環境を整える。そしてプログラムフリーザによる緩速凍結法、過冷却急速凍結法を用いた凍結保存歯を6、9、12か月目にそれぞれ歯根膜細胞を採取して細胞増殖能を分析していくとともに、免疫組織化学的、酵素組織化学的検索のための組織標本を作製していく。培養細胞用凍結保存液による緩慢凍結法、ガラス化法急速凍結法を用いた凍結保存歯は24か月目に歯根膜細胞を採取して細胞増殖能を分析し、免疫組織化学的、酵素組織化学的検索のための組織標本を作製する。並行してアポトーシス細胞の検出、歯根膜幹細胞の分布の検索を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用動物の飼育期間が短くなり、飼育費としての支出が予定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験用動物の購入、飼育費の支払い、歯根膜細胞の培養に用いる培地、試薬、器具、染色用試薬の購入に使用する。また情報収集、研究成果発表のための旅費に使用する。
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