間葉系幹細胞を低酸素状態で培養すると骨細胞への分化が亢進するという報告がある。そこで凍結保存歯を移植した際の歯根膜細胞による歯周組織再生能を促進するために、歯根膜幹細胞に対して骨分化誘導と低酸素処理を行い、その有効性を検討した。4週齢雄性ラットの上下顎から臼歯を抜去して歯根膜由来細胞を分離し、間葉系幹細胞としての特性を確認するために間葉系幹細胞マーカー、陰性マーカーについてのフローサイトメトリー解析を行ったところ、間葉系幹細胞マーカーは90%以上で発現しており、陰性マーカーの発現率は1%未満であった。歯根膜幹細胞に対して低酸素処理を骨分化誘導と同時、骨分化誘導前、骨分化誘導後に行い、骨分化の指標としてRunx2、血管新生の指標としてVegfa、細胞誘導の指標としてCxcl12を使用し、定量的RT-PCR法でそれぞれの遺伝子発現量を計測した。低酸素処理を骨分化誘導と同時に行うとVegfaの発現は上昇したがRunx2の発現は低下した。低酸素処理を骨分化誘導前に行うとVegfaの発現は低下しRunx2の発現には変化がみられなかった。低酸素処理を骨分化誘導後に行うとVegfaの発現が上昇し、in vitroでの石灰化形成が骨分化誘導のみを行った群と比較して有意に亢進していた。低酸素処理の有無に関わらず骨分化誘導によりCxcl12の発現は低下した。以上により低酸素処理を骨分化誘導後に行うことで歯根膜幹細胞による骨を主体とする歯周組織の再生を促進する可能性が示唆された。
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