研究実績の概要 |
Epigeneticとは「DNAの配列の変化なしに遺伝子発現が変化する事」と定義され、DNAメチル化(genome-wideな低メチル化および遺伝子プロモーター領域の高メチル化)、ヒストン修飾などによる可逆的な遺伝子制御機構のことである。近年、新しいepigeneticな現象として、固形癌においてmicroRNA(miRNA)の異常発現が報告され、これらが癌の発生や進展に大きく関与していることが明らかになってきた。口腔発癌においても同様にmiRNAの関与が示唆されているが、その詳細の機構については依然不明のままである。そこで本研究では、口腔癌動物モデルとして頻用されている4-ニトロキノリン1-オキサイド(4NQO)誘発ラット舌発癌モデルにおけるmiRNAの異常発現とその機構について解析し、口腔発癌モデルとしての有用性を検証することを目的とした。 研究方法は、6週齢F344ラットを20ppm 4-NQO飲水投与群40匹(グループ1)と非処置群14匹(グループ2)に分け、グループ1は、実験開始より8週間20ppmの4-NQOの飲水投与を行い、32週後にラットを犠牲死し舌組織を採取する。舌組織は2分割し、一方はホルマリン固定(病理組織的検索用)し、もう一方は-80℃で凍結保存する。非処置群も同様に32週後を犠牲死し、舌組織をグループ1と同様に採取・保存する。病理組織学検索により早期癌、浸潤癌と診断された舌腫瘍組織を用いて、ヒト口腔扁平上皮癌において発現異常が報告されているmiRNA(miR-21,miR-155,miR-130bの上昇とmiR99a,miR-100の低下)5種をターゲットとし、real time PCR法にてヒトと同様な発現異常が認められるかを検証した。結果は、ヒト扁平上皮癌と同様にmiR-21の発現の上昇とmiR-99a,miR-100の発現の低下が認められたが、いずれも有意差は確認できなかった。また、miR-155,miR-130bは逆に発現が低下していた。今後は検体数を増やして再評価する予定である。
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