研究課題
過剰歯とは正常な歯数以上に存在する歯を指し、ヒトでは、通常は抜歯の適応となる疾患である。発症頻度は乳歯では0.1%以下であるのに対し、永久歯では約3%と高く、加齢変化もその要因の1つと考えられていた。歯数制御による歯の再生医療を目指し、過剰歯を有する種々の遺伝子欠損マウスの解析により、その分子機構の一端を明らかにしてきた。 Runx2-/-が胎生致死であるためCebpb-/-/Runx2+/-を用いて上顎切歯部での過剰歯の形成について解析した。組織幹細胞のひとつであるエナメル上皮幹細胞のステムセルエイジングが過剰歯形成を引き起こすことを示唆する以下の興味深い研究結果を見出した。(1)Runx2+/-においては胎生期の上顎切歯歯胚に浸透率78%でbuddingを生じ、buddingにエナメル上皮幹細胞マーカーであるSox2陽性細胞が充満していることを見出した。Cebpb-/-/Runx2+/-ではさらにbuddingが伸長し、浸透率も100%となった。しかし、過剰歯の形成には至らずbuddingは退化消失した。(2)Cebpb-/-マウスにおいては生後3か月以降に野生型マウスに比べて有意に上顎切歯のapical budの縮小とエナメル上皮幹細胞数の減少を認めた。さらにapical bud近傍で異所性エナメル質の増生を認めた。(3)Cebpb-/-/Runx2+/-マウスは、生後3か月以降に初めて上顎切歯のapical bud近傍に過剰歯の形成を認めた。Cebpb-/-マウスにおいては、apical bud近傍でエナメル上皮幹細胞がステムセルエイジングにより、未分化性を維持できなくなった。その結果、エナメル上皮幹細胞がエナメル質を分泌するエナメル上皮細胞へと分化し、apical bud近傍に異所性にエナメル質の増生を引き起こしたのではないかと考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画に沿って、遺伝子欠損マウスを用いた歯数制御および歯の大きさの分子メカニズムの解析を行っていたところ、当初計画よりも進展があったため、平成27年度に施行する予定であったCEBP/β欠損マウスを利用し、もう1つの歯数増加のメカニズムである歯原上皮幹細胞の局所での上皮間葉誘導による歯牙再生を目指した研究を行った。
平成27年度に施行する施行する予定であったCEBP/β欠損マウスを利用し、もう1つの歯数増加のメカニズムである歯原上皮幹細胞の局所での上皮間葉誘導による歯牙再生を目指した研究をすでに平成26年度中に開始しているが、平成27年度中も引き続き行うことが必要である。また哺乳類の基本歯式を有する実験動物を用いたin vivo で歯数を増加させるシステムの確立に関する研究も開始する。研究が当初計画どおりにすすまないときの対応として、遺伝性歯牙欠損症に対して有効な治療の手掛かりを探るため,歯牙欠損を呈するモデルマウスとしてRunx2遺伝子欠損マウスを用い,これまでにわれわれが報告してきた過剰歯を認めるUSAG-1遺伝子欠損マウスと交配させ,歯の形成が回復するかどうか,形態学的解析を行う.
当初の研究計画に沿って、遺伝子欠損マウスを用いた歯数制御および歯の大きさの分子メカニズムの解析を行っていたところ、当初計画よりも進展があったため、平成27年度に施行する予定であったCEBP/β欠損マウスを利用し、もう1つの歯数増加のメカニズムである歯原上皮幹細胞の局所での上皮間葉誘導による歯牙再生を目指した研究を行ったそのため前倒し支払請求を行ったが、予定していた金額ほど。研究費を使用しなかったため。
今年度に研究の進行にあわせて使用する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (2件)
J Oral Maxillofac Surg Med Path,
巻: 27 ページ: 106-111
J Dent Res
巻: 94 ページ: 52S-58S
10.1177/0022034514559127
Nature Commun
巻: 6 ページ: 6750
10.1038/ncomms7750
PLoS ONE
巻: 9 ページ: e96938
10.1371/journal.pone.0096938
J Biomed Sci,
巻: 21 ページ: 44
10.1186/1423-0127-21-44.
Int J Oral Maxillofac Surg
巻: 43 ページ: 1022-1029
10.1016/j.ijom.2014.02.014
Reviews on Recent Clinical Trials
巻: 9 ページ: 37-52
J Tissue Eng Regen M.
巻: 8 ページ: 919-924
10.1002/term.1596
http://www.med.kyoto-u.ac.jp/organization-staff/research/doctoral_course/r-057/
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~oral_surg/Oral_Surg_index.html