本研究は角化嚢胞性歯原性腫瘍(KCOT)由来線維芽細胞に置けるカルシウム感受性受容体(CasR)の役割を解析し、カルシウム刺激による本腫瘍の骨代謝に及ぼす影響について検討することを目的として実施した。その結果、本研究では以下の結果を得た。(1)KCOT由来線維芽細胞はカルシウム濃度依存性にBone morphogenic protein (BMP)-2 mRNAとその蛋白の発現を増強した。(2)KCOT由来線維芽細胞のCasR発現をノックダウンさせるとカルシウム刺激によるBMP-2 mRNAとその蛋白の発現が阻害された。(3)KCOT由来線維芽細胞をカルシウム刺激するとp-38 MAPK、ERK1/2及びJNKがリン酸化された。(4)KCOT由来線維芽細胞をp-38 MAPK、ERK1/2及びJNKの各阻害剤SB203580、PD98059、SP600125で処理するとカルシウム刺激によるBMP-2 mRNA発現が抑制された。(5)KCOT由来線維芽細胞をカルシウム刺激するとp65蛋白が核内移行し、NF-kB阻害剤であるPDTCはカルシウム刺激によるBMP-2 mRNA発現を抑制した。 以上の結果より、KCOT由来線維芽細胞はカルシウム刺激によりCasRを介してp-38 MAPK、ERK1/2及びJNK、NF-kBを活性化し、カルシウムの濃度依存性にBMP-2発現を増強すると考えられた。 また、ヒト脂肪組織から採取したヒト脂肪組織由来幹細胞をカルシウム刺激するとKCOT由来線維芽細胞と同様にBMP-2発現を認めた。これらの結果より、KCOT由来線維芽細胞やヒト脂肪組織由来幹細胞を用いて安価で安全なカルシウムによる骨形成の新規治療法の可能性が示唆された。
|