研究課題/領域番号 |
25463090
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 匡理 九州大学, 大学病院, 助教 (30346803)
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研究分担者 |
高橋 富美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50274436)
梶岡 俊一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90274472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨再生 / 歯科インプラント / Wnt/β-カテニン経路 |
研究実績の概要 |
Wnt/β-カテニン経路は骨形成に関与していることが知られており、この経路を活性化することにより、骨形成促進効果がみられることが知られている。そこで,この経路を活性化する炭酸リチウムの局所投与による骨再生効果を明らかにするため、動物実験モデルと臨床試験で骨形成状態の解析を行った。 動物実験モデルでは、Wistar ラット♂11週齢に対して、人為的に頸骨部に骨欠損を作製し、同部に炭酸リチウム含有 Matrigelを局所投与(5、10、20 mM)し、炭酸リチウム局所投与の影響について解析を行った。CT解析と骨形態計測の結果より、炭酸リチウムは堅固な層板骨に富む新生骨を形成・促進し、骨欠損周囲の海綿骨量は炭酸リチウム局所投与で増加することが示唆された。 臨床試験では、炭酸リチウムを歯科インプラント埋入のための抜歯窩局所に投与し、炭酸リチウムの安全性および骨形成促進能の有無について評価を行っている。現在、治験前段階の3例を含む非投与群(6人)と炭酸リチウム投与群(7人)がエントリーしており、いずれの群も抜歯後に感染を起こした症例はなく治癒経過良好であった。非投与群において、抜歯から歯科インプラント埋入までの日数は156.7±16.5 日(平均±SE, n=6)であった。また、インプラント埋入時のインプラント安定指数(ISQ値)は79.2±0.93(平均±SE, n=5)であり、埋入トルクは31.0±2.9 Ncm(平均±SE, n=5)であった。今後、炭酸リチウム群の解析を進め、炭酸リチウムの安全性と骨形成促進能を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験モデルでは成果がみられており、研究成果を国内外の学会で発表し、論文掲載に至っている。 臨床試験では、現在も症例のリクルート中(あと2症例必要)であることと、これまでの症例から採取した骨組織の解析が中途のため,やや遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験モデルおよび臨床試験による解析を行い、さらに研究を進めていく。また、骨再生を期待する他の口腔外科疾患に対する炭酸リチウムの臨床応用の準備を行っていく予定である。 ①動物実験モデル:他の骨形成に関わる因子についても免疫組織学的解析や分子生物学的解析を行っていく予定である。 ②臨床試験:引き続き用量漸増比較試験を継続して行っていく。炭酸リチウム投与群と非投与群の採取した骨組織における骨形成状態を比較検討するため、免疫組織学的解析(ALP 染色、TRAP 染色)や細胞レベルでの分子生物学的解析を行っていく予定である。 ③臨床応用に向けての準備:本研究の結果をもとに、骨再生を期待する様々な口腔外科疾患に対する炭酸リチウムの臨床応用に向けての情報収集および前準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床試験のエントリーが遅れていることと、現在までに臨床試験で採取した組織の解析が中途であるために次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
臨床試験のエントリーの追加,採取した組織での免疫組織学的解析と分子生物学的解析を行っていく。
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