本研究では胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞の増殖あるいは未分化維持に関与しているSALL4(sal-like 4)遺伝子に着目し、耐性能を有した腫瘍細胞を死滅させることを目的としている。平成25年度には口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞株にセルソーティングを行い、SP細胞ではSALLの発現がnon-SP細胞に比べ有意に増加し、5-FU耐性SAS細胞株においてSALL4発現抑制を行うと抗癌剤耐性が緩和した可能性があることを示した。平成26年度にはOSCC細胞株でSALL4発現を抑制することにより、自己複製の維持に重要な役割を果たし細胞周期に関わることで細胞増殖を制御しているBmi-1の発現が減少することを示した。さらに口腔扁平上皮癌の検体114例の生検時標本では、SALL4発現と口腔癌の浸潤様式に相関性が有り、Diffuse typeではSALL4mRNAの発現が有意に高いことを示した。平成27年度はScid マウスの皮下に当研究室で作成した5-FU耐性SAS細胞株を移植してモデルマウスを作成し、SALL4発現を抑制することで5-FU耐性の減弱の有無について実験を行った。しかしマウスにおけるSALL4発現抑制が困難であり有意な実験結果は得られなかった。そのためこれまでの実験結果についてメルボルンで開催された22th International Conference on Oral and Maxillofacial Surgeryで「Overexpression of the novel oncogene SALL4 in oral squamous cell carcinoma」というタイトルで報告を行った。
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