研究課題
口蓋裂における口蓋形成術は粘膜移植を併用したpush back法にて、我々の鼻咽腔閉鎖機能は90.3%が良好な結果が得られるようになったが、その一方で、口蓋粘膜組織の後方移動により、口蓋前方にろう孔が発生しやすくなることが問題となっていた。2006年から2011年までの6年間の我々の片側性唇顎口蓋裂における口蓋形成術後のろう孔発生率は43.7%であった。ろう孔の出現は、鼻漏出はもちろん、ろう孔が大きくなると異常構音を引き起こす可能性が高くなり、二次的にろう孔閉鎖術が必要になる場合もある。われわれの関連研究では、ろう孔の形態が、円状あるいは、楕円状といった大きなものになると側音化構音あるいは口蓋化構音を発症しやすくなることが明らかとなった。このことから、術後の鼻咽腔閉鎖機能の良好な成績を維持をしつつ、円状・楕円状といった大きなろう孔をつくらない工夫が必要であると考えた。本研究の準備研究として、2012年~2013年の2年間はろう孔発生を改善する取り組みの一環として、口蓋前方の鼻腔粘膜が一層になる部分の破裂側どうしの粘膜を重ね合わせて閉鎖する縫合(重ね合わせ縫合)を取り入れたところ、ろう孔発生率は、26.5%と減少傾向にあり、重ね合わせ縫合はろう孔発生を改善させる有用な方法の一つとして考えられたが、依然として円状・楕円状の大きなろう孔のある症例がみられたことが大きな課題として残った。そこで、2014年から患者個人の静脈血を術中に10~20 ml採取し、骨再生・組織再生に有用とされる多血小板血漿を即時作製し、重ね合わせ縫合を行った部分に添付する方法を、承諾の得られた患者に施行し、術後のろう孔発生状況を評価したところ、ろう孔の発生率は11.3%まで減少し、かつ円状・楕円状のろう孔が1例もなかった。この結果から、多血小板血漿は口蓋形成術後のろう孔発生防止に有用であることが示唆された。
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