研究課題/領域番号 |
25463097
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
藤川 考 東京医科大学, 医学部, 助教 (60322468)
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研究分担者 |
近津 大地 東京医科大学, 医学部, 教授 (30343122)
里見 貴史 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70276921)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生誘導 / VEGF / cox-2 |
研究概要 |
口腔癌術後の広範な粘膜欠損部において、cox-2由来のプロスタグランジンがPG受容体サブタイプ受容体(EP2、4)を介して血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を誘導することで、創傷治癒を促進するメカニズムをin vitroの系を用いて解析し、この結果を口腔粘膜欠損モデルに応用し、創傷治癒機序を検討することで、新たな再生誘導療法を確立することを目的としているが、今年度はまずin vitro系において、線維芽細胞のVEGF産生に及ぼすcox-2の影響を確認した。具体的には、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI1640を用いて継代した培養マウス口腔粘膜線維芽細胞を、24well培養プレートを用い、0.1%ウシアルブミン添加RPMI1640にて24時間培養したのち、cox-2選択的阻害薬であるNS398で刺激した群、および非刺激群を作成し、さらに24時間培養後に細胞を採取した。次に採取した細胞株よりmRNAを抽出し、cox-2およびVEGFmRNAに特異的なプライマーを用いてそれぞれのmRNAをRT-PCR法によって検出した。その結果、すべての郡でcox-2、VEGFを発現していた。さらには、cox-2選択的阻害薬NS398を添加しても、VEGFの産生低下が見られなかった。この結果は、cox-2由来のプロスタグランジンがVEGFの発現を誘導するという、今回の研究の大前提と異なるものであり、実験の過程に誤りがあるのか、あるいは予想外の機序によりこの現象が生じるのか、現在再検証を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
cox-2由来のプロスタグランジンがVEGF、bFGF、TGFβ、PDGFなどの血管新生因子の発現を誘導することは、報告が散見され始めている所見である。したがって、培養マウス口腔粘膜繊維芽細胞をcox-2選択的阻害薬で刺激すると、cox-2の活性が低下し、VEGFの産生低下が見られることが予想される。しかし、継代した培養マウス口腔粘膜線維芽細胞を、cox-2選択的阻害薬であるNS398で刺激した群においてもVEGFを発現しており、予想通りの結果が得られていないため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、口腔癌切除後の欠損部の補填における究極のゴールは瘢痕拘縮やDonor siteの侵襲のない、完全な組織再生であり、当然のことながら未だその方法は開発されておらず、現在ではより低侵襲に効率よく創治癒を促進する治療が求められ、再生医療の利用に期待が集まっている。この再生医療の3本柱は「バイオマテリアル」、「細胞」、「成長因子」と言われているが、この「成長因子」の中の血管内皮成長因子(VEGF)は創傷治癒過程において必須の事象である繊維芽細胞の遊走、増殖、そして結合組織成分の合成分泌による肉芽の増生の際に血管が新生されるが、その中心的な血管新生因子として作用するため、脚光を浴びている。一方、内因性プロスタグランジン合成酵素であるcox-2は、組織の修復に深く関与していることが明らかになってきている。そして創傷治癒過程において、繊維芽細胞のcox-2を介したVEGF産生メカニズムの全容は未だ明らかになっておらず、本研究は口腔粘膜の創傷治癒過程において、cox-2由来のPGがVEGFを発現させ、上皮欠損部の治癒を促進することを明らかにし、さらにはPG受容体の選択的作動薬でVEGF産生をコントロールしようとするものであり、これが完遂されれば、顎口腔領域のみならず多方面で組織欠損を伴う際の新たな治療戦略になりうる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究進行がやや遅れており、in vivo系の実験にかかわるものの購入がされていないため。 in vivo系実験はcox-2ノックアウトマウスを用い、口腔粘膜損傷モデルを作成する。この口腔粘膜損傷モデルにEP2とEP4のcox-2選択的作動薬を数種類の濃度で用意し、粘膜損傷部に局所投与する。これらマウスの粘膜から切片を作成し、抗VEGF抗体を用いて免疫蛍光染色法で染色する。この結果により、PGE受容体の選択的作動薬を組織欠損部に作用させることでcox-2由来のPGがVEGFを産生すること、創傷治癒を促進させる作動薬の至適濃度を判明させる。これを創傷治癒を期待する部に応用すれば高い治療効果が期待できると考えている。
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