口腔癌切除後の欠損部はその範囲に応じて、縫縮や植皮、創傷被覆材の貼付、遊離あるいは有 茎皮弁による再建などが行われているが、この組織補填法によっては、その後の患者の Quality of life を著しく低下させるため、極めて慎重に選択されなければならず、現在ではより低侵襲に効率よく創治癒を促進する治療が求められ、再生医療の 利用に期待が集まっており、 最近では血管新生因子として作用する血管内皮成長因子(VEGE)が脚光をあびている.一方、創傷治癒過程に おいて、線維芽細胞の COX-2 を介した VEGF 産生メカニズムの全容は未だ明らかではない。そこで この疑問を解決するために、口腔粘膜の創傷治癒に COX-2 由来の PG が重要であることを確認し、さらにこの PG が VEGF を誘導することで、創傷治癒を促進することを明らかにすることを目的とした。 米チャールズ・リバー社 9 週令の COX-2 ノックアウトマウス(+/+)での実験に先立ち、ワイルドマウスを使用、VEGF 発現のための PGE2 受容体選択的作動薬の最適濃度を明らかにするため、口腔粘 膜損傷モデルを作成すべく、舌の一部に実験的潰瘍を作成した。このマウスにCOX-2作 動薬(濃度は 0.1mg/ml、0.2mg/ml )を内服させた。対照は同量の溶媒(生理食塩水) を内服投与した群とした。これらを、1週間後、2週間後に屠殺し、粘膜から切片を作成し、HE染色、抗 VEGF 抗体を用いて免疫蛍光 染色法で染色した。同様にノックアウトマウスで実験を行えば、COX-2由来のPGがVEGFを産生すること、創傷治癒を促進させる作動薬の至適濃度の存在が判明し、創傷治癒を期待する部に応用すれば高い治療効果が期待できると考えられる。
|