研究課題/領域番号 |
25463098
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
恩田 健志 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30433949)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 分子標的治療 / 免疫療法 / プロテオミクス / HSP90 |
研究概要 |
近年の研究成果により、臨床試験を終了し標準治療として臨床応用され高い治療効果が報告された分子標的治療薬が出現してきた。一方、口腔扁平上皮癌に対する分子標的治療は確立されておらず、有効な標的分子も確定されていない。研究代表者はゲノミクス、トランスクリプトーム、プロテオミクス解析技術を駆使して167種類の標的分子候補をリストアップしてきた。本年度はリストアップした発現異常分子について腫瘍マーカーとしての有用性、妥当性を検証し動物モデルを用いた臨床前試験への発展を試みた。口腔扁平上皮癌細胞のプロテオーム解析により同定した発現異常タンパク質群についてKeyMolnet®を用いた共通上流検索を行いHSP90が口腔扁平上皮癌細胞の増殖、生存に関与する多くのクライアントタンパク質の機能維持と安定性を調節するターゲットとして抽出された。口腔扁平上皮癌細胞にHSP90阻害剤を投与しHSP90を標的とした分子標的治療の可能性について検討した。HSP90高発現株KONにHSP90阻害剤17-AAGを投与し、投与群と非投与群についてMTT assay、Wound-healing assay、Invasion assay、Apoptosis assayにより解析した。MTT assayでは17-AAG非投与群と比較して投与群の生細胞数の低下が認められた。Wound-healing assayでは投与群で細胞増殖、浸潤が抑制された。Invasion assayでは投与群で移動能、浸潤能が抑制された。Apoptosis assayでは投与群でアポトーシスを起こした細胞数が増加した。本研究の結果、HSP90は口腔扁平上皮癌の分子標的治療のターゲットとなる可能性が示唆された。次年度は口腔扁平上皮癌細胞を移植した動物モデルを用いてHSP90モノクロナール抗体を投与し、腫瘍抑制効果を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、研究代表者がゲノミクス、トランスクリプトーム、プロテオミクス解析技術を駆使してリストアップした167種類の口腔扁平上皮癌細胞が発現異常を示す分子について腫瘍マーカーとしての有用性、妥当性を検証するとともに、動物モデルを用いた臨床前試験を行い、薬剤の安全性と有効性のデータを収集し、口腔扁平上皮癌の新規分子標的治療薬として臨床試験への発展を試みることである。本年度はリストアップした発現異常分子の中から分子標的治療のターゲットとして有力な分子を抽出し、動物モデルを用いた臨床前試験へ発展させることが目的であった。癌細胞が異常を示す多数のシグナル伝達経路を調節している単一タンパク質を阻害できれば有効な癌治療法が確立できると考えられる。口腔扁平上皮癌細胞のプロテオーム解析により同定した発現異常タンパク質群についてKeyMolnet®を用いた共通上流検索を行いHSP90を口腔扁平上皮癌細胞の増殖、生存に関与する多くのクライアントタンパク質の機能維持と安定性を調節するターゲットとして抽出した。HSP90の阻害による口腔癌の抗腫瘍効果をIn vitroで検証し、HSP90を用いた口腔扁平上皮癌の新規分子標的治療の可能性について示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
HSP90のモノクローナル抗体と口腔扁平上皮癌を移植した担癌マウスを作成し解析を行う。BALB/c雌性マウスに免疫し,最終免疫から3日後に感作された脾臓を摘出し,In vitroにて培養しておいた対数増殖期のマウスミエローマ細胞株と電気細胞融合を行う。スクリーニング,クローニングを経て多数のモノクロナール抗体を分離し大量培養を行う。HSP90高発現株KONを用いる。また遺伝子導入法(リポフェクション)を用いて標的遺伝子産物を強制発現した細胞株を作成する。siRNAにて標的遺伝子産物の発現をノックダウンした細胞株を作成する。コントロールとして発現ベクターのみ(Mock)を導入した細胞株を作成する。これらの細胞株を、ヌードマウスに同所移植し、腫瘍形成実験を行い、担癌マウス実験系を確立する。病理組織学的に確認する。(H-E染色)移植した腫瘍の組織ホルマリン固定標本を用いた免疫染色を行い移植後も標的遺伝子産物が発現していることを確認する。作製したヌードマウス実験系を利用した担癌マウスにHSP90のモノクロナール抗体を投与する。投与後1時間後、6時間後、12時間後、18時間後、24時間後、以後6時間ごとに腫瘍の大きさの測定と病理組織学的観察を行う。またマイクロCTによる3次元的な腫瘍の大きさを測定する。CR、PRを示す口腔扁平上皮癌由来細胞株とPDを示す細胞株のマイクロアレイ解析とプロテオミクス解析の結果を比較し、治療抵抗性遺伝子を解明、臨床試験における適応症例の指標を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
口腔扁平上皮癌細胞のプロテオーム解析により同定した発現異常タンパク質群から分子標的治療のターゲットとなる分子を抽出するための手法としてタンパク質核酸データベースに基づいたKeyMolnet®を用いた共通上流検索の受託解析サービスを利用した。また、ゲノミクス、トランスクリプトーム、プロテオミクス解析技術を駆使して既にリストアップ済みの口腔扁平上皮癌の標的分子候補167分子から分子標的治療のターゲットとなる分子を抽出するため口腔扁平上皮癌細胞のメタボローム解析を行い、DNA、RNA、タンパク質、代謝産物と癌細胞の生命活動を統合的に把握し、分子標的治療のターゲット候補を抽出した。受託解析を利用したため、条件設定や実験の失敗がなく、消耗品である試薬の購入が予定使用額よりも少額で対応可能であった。 次年度は、抽出した分子標的候補について動物モデルを用いた実験を行う。動物実験や動物飼育に要する経費と実験試薬などの消耗品が必要となる。残高2599円はこれらに用いる予定である。
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